トップページ > 研究活動 > 研究委員会 > 極厚板大入熱溶接部強度検討FS委員会
コンテナ船の大型化に伴い、80mm程度の高張力鋼がデッキやコーミングに採用されつつある。そこでは30万J/cm以上の大入熱溶接が採用されようとしている。厚板になればなるほど脆性き裂停止能力は低下すると考えられており、シャルピー衝撃値の高い鋼材でも、厚板では一旦脆性破壊が生じると停止させることが非常に難しいと認識されてきた。最近実施された、@E級鋼としてのシャルピー値を満足した65mm−70mm厚高張力鋼の大入熱継手に対するESSO試験の報告によると、溶接ボンド部から発生させた脆性き裂は、その溶接部を外れることなしに直進した。A上記厚板の母材に進入させる試験でも脆性き裂を停止できず、スティフナを配してK値を低下させた場所でも停止することなく伝播した。また、コンテナ船のシアーストレイキのエレクションジョイントに長さ約500mmのクラック又は欠陥が発生した例があることも報告されており、脆性破壊が発生する引き金になりかねなかったと考えられる。 一方、1997年11月24日にコンテナ船がポルトガル領アドレス諸島付近で嵐に遭い真二つになり、船体前半部が5日後に沈没したのは写真などの状況から脆性破壊の事例と推察され、実船でも脆性破壊が短距離で停止せず大事故に至る可能性がある事を示唆している。 上記の背景にもかかわらず、65mmを超える厚板を採用したコンテナ船は現在も建造されており、さらに80mmを超える高張力鋼を採用する計画もなされている。従来、止まると考えられていた脆性クラックが、厚板では止まらないとなると、このような厚板を使用した船の安全性についての考え方を見直す緊急の必要があると考えざるを得ない。世界の各船級協会にも上記の認識を共有してもらう必要性がある。 そこで、この問題の解決を図るため、とりあえず検証課題とターゲットを設定するためのF/Sを1年間で行い、日本財団などに助成を求めてさらなる研究に進むべきか否かを検討することにしたい。
委員会長(所属) | 豊貞雅宏(九州大学) |
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委員会委員数 | 27名 |
キーワード | 破壊靱性、脆性破壊停止性能、溶接法と溶接入熱、非破壊検査、定期検査、疲労き裂伝播 |
活動期間 | H17.12〜H18.11 |