トップページ > シリーズ・読みもの > シリーズ 海学実践 > No.001 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第24号 (2009年5月) より

シリーズ 保存帆船「海王丸」と連携したニュー・シーマンシップの涵養


1. はじめに


写真1 保存帆船「海王丸」(富山新港内に係留保管)

富山商船高専臨海実習場(写真2)は伏木富山港新湊区(富山新港)にあり、練習船「若潮丸」や小型舟艇により、様々な海洋実習や行事、一般に対する公開講座を行っている。また、富山新港には保存帆船「海王丸」(写真1)もあり、多くの連携を行っている。


2. 商船学科1、2年生におけるカッター・ロープワーク実習


写真2 商船学科のカッター帆走実習
(背面が当校臨海実習場建屋と練習船「若潮丸」)

商船学科1年生は授業のほとんどが一般課目で、最も海の世界を間近に感じられるのが海洋実習の時間であり、このメインがカッター撓漕である。カッターにより船の基本名称を理解し、全員で漕ぐ事によってチームワークを養うことができる。そして、荒天等で出艇不可能な場合は、ロープワークの実習を行う。ここでは、もやい結び等の基本はもちろんのこと、最終的には、スプライスの作成を各自が行う。

そして、商船学科では2年生に進級すると、航海コースは、カッター実習で艇長・艇指揮練習を行う。また、写真2で示すように、カッターの帆走も多くの時間行う。こうして、操船基礎を学び、多少なりとも船長気分を味わうことができる。

3. 全校参加カッターレース


写真3 カッターレース(国際流通学科女子艇の力漕)

当校では、商船学科、電子制御工学科、情報工学科、国際流通学科があるが、全学生参加の全クラス対抗カッターレース大会が、毎年7月に開催されている。各クラスで男子艇や女子艇などが構成され、それぞれのチームが一丸となり勝敗を競う。また、多くのクラスがオリジナルTシャツで盛り上がっている(写真3)。この行事を通して全学生がマリンスポーツを楽しむことはもちろん、クラス内でのチームワークを高めることに貢献している。このレースは、富山商船だけでなく富山県の名物行事となっている。

4. 海王丸による展帆訓練


写真4 緊張のマスト登り、高所作業

国際流通学科は主に語学やマーケティングを中心に学習しているが、4年次になり選択授業として帆船「海王丸」での実習を行っている。ここでは(財)伏木富山港・海王丸財団の多大なるご協力を頂いている。実習内容としては、ロープワークやマスト登り(写真4) 、船内見学、シーマンシップの学習などを行い、最後には写真5に示すような展帆一式を行っている。

展帆訓練は高所作業なので、学生たちは危険を感じながらも真剣に取り組んでいる。また、一つの帆を張るだけでかなりの時間がかかり、かなりの体力を要することを知る。こうして帆船の仕事が、こんなにも危険で時間のかかる作業であることを、身をもって体験することができる。こうして、実際に自分の体で体験することにより、目で学ぶことよりも理解が深まり、学ぶ意欲が向上する。また、船舶職員の仕事やシーマンシップを学ぶことができる。一方、富山県の観光資源としても貴重とされている海王丸での実習を行ったことで自県の素晴らしさを改めて認識することができる。


写真5 学生主導による「海王丸」展帆作業

5. 海王丸ボランティアでの活動

海王丸では一般市民から募ったボランティアにより、展帆作業や整備作業を実施している。これに参加している学生もいる。ここでは、展帆だけでなく、マストのペンキ塗りや滑車のグリスアップ、ロープの交換作業やセイルメイキングなどを、ベテランの乗組員の指導のもとに行っている。ここで、参加学生達は、失われつつある技術と将来役立つ技術の両方を一度に学ぶことができるので、楽しみながらも真剣に取り組んでいる。また、学生達は、失われつつある技術は、自分たちの手で継承していくことが大切だと切に感じている。なお、「海王丸」の詳細については、(財)伏木富山港・海王丸財団のホームページ”http://www.kaiwomaru.jp/”を参照されたい。

6. おわりに

カッター実習の基礎海技教育としての効果の高さは長年の歴史が実証していて、当校では積極的に踏襲していく。そして、この一端を多くの方に経験してもらうために、当校のカッター、実習船艇を利用した一般市民向けの公開講座を実施している。

「海王丸」においては、地域の方々とともに、従来の商船系のシーマンシップだけでなく、幅広い層に利活用され、人材の育成を期待する、ニュー・シーマンシップの育成に努めていきたい。



千葉 元(富山高等専門学校 商船学科)
舘 清志(富山高等専門学校 国際ビジネス学科)
(KANRIN(咸臨)第24号(2009年5月)発行当時)

▲このページの最上部へ

シリーズインデックスへ

学会事務局

〒105-0012

MAP

東京都港区芝大門2-12-9
浜松町矢崎ホワイトビル 3階
TEL:03-3438-2014/2015
FAX:03-3438-2016