トップページ > シリーズ・読みもの > シリーズ 海学実践 > No.006 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第26号(2009年9月) より

シリーズ No.006 まちづくり文化ボランティアグループ「よこすか市民会議(YCC)」の海洋に関する教育、普及、啓発活動について―11年間の実施報告、提言―


1. はじめに

1997年横須賀市は市制90周年に当り、その目指す都市像を「国際海の手文化都市」とした。それに相応しい市民ボランティアグループとして、よこすか市民会議は活動を開始した。スローガンは、「21世紀・よこすか発・海へ〜海洋文化を地域から!」である。

21世紀に向けて、人類は食料、資源エネルギー、交通・運輸、気象・災害・安全、歴史文化等の面で地球の7割を占める海洋との多様な共生を求められる。三方海に囲まれ、海との深い関わりの中で特色ある歴史と文化を育んできた横須賀から、海のまちづくり(国際海洋文化都市)を掲唱し、発信してきた。

2. 主旨

「よこすか海洋文化フェア」銘うって毎年、海洋をテーマに一般市民を対象にして海を体感、海を知ってもらうことが重要だと考えた。首都圏に位置する横須賀には、わが国或いは世界に著名な海洋研究機関、団体、企業が存在するが、余り知られていない。海洋は複雑で全体像を一度に理解することは難しい。そこで、身近な沿岸域の体験から、最先端の知見まで毎年順次、多面的に取上げ、一般市民の理解を共に深めたいと考えた。従って講師等についても、わが国、地域の実力者の方々に直接ご指導をお願いした。

3. 具体的な実施内容

3.1 体験型プロジェクト

3.1.1 地域の海洋施設の一般公開、見学会

地域の海洋施設の一般公開、見学会は表1のとおりである。

表1 地域の海洋施設の一般公開、見学会
一般公開、見学会 参加者
1998 海洋科学技術センター海洋調査研究船「かいれい・かいこう」 (横須賀新港) 700
1998、1999 夢の高速船「テクノスーパーライナー」(久里浜港) 1,000
1999 運輸省 港湾技術研究所(久里浜) 1,200
2000 海洋掘削研究船「Joides Resolution 号」(横須賀新港) 700
2000 超大型浮体式構造物「メガフロート」
(住友重機工業追浜造船所沖)
500
(応募者4,200)
2001 (独)水産総合研究センター 中央水産研究所 海区水産業研究部「海の中の親子〜貝の赤ちゃんは泳ぎが上手??」(荒崎) 700
2002 神奈川県水産総合研究所
「海とさかなを学ぼう♪♪サカナ、サカナ、サカナ気になるギョ♪♪」(城ヶ島)
1,400

3.1.2 海を楽しむクルージングプロジェクト

1997年より、大型客船かめりあ丸等を用いた「国際海の手シーサイドウォークと黒船クルージング」を実施し、5年間で延べ5,500人の参加者があった。また、2001年より、浦賀港で「ヨットクルーザーアスパイア号に乗ろう」を親子を対象に実施し、3年間で延べ170人の参加者があった。

3.1.3 海の自然環境学習会

横須賀市人文・自然博物館の協力のもと、2000年より中学生以上6ヶ月コース、室内6回・フィールド6回、スノーケリングを含む自然環境学習会を実施し、6年間で延べ260人の参加者があった。また、2006年から、夏休みの4日間に「子と親の海の自然環境学習会」を実施し、マリンクラフト、箱メガネづくりと三浦半島沿岸観察を行った。3年間で子と親26組の参加があった。

3.1.4 「森は海の恋人、1000年の森をつくる会」

美しい海を育むには美しい森をつくることが重要である。2001年から2008年まで、ドングリ拾い、播種、育苗、植樹(宮脇方式による潜在自然植生方式)を行った。会員は70人であり、2007年には1万本植樹を達成、「小さな森づくり運動」を展開している。ほかに、竹林整備、竹細工グループも活動している。

3.2 海洋知識の普及、啓発プロジェクト

3.2.1 よこすか海洋シンポジウム

1998年から毎年、一流講師を3〜5名招待し、よこすか海洋シンポジウムを行った。計11回で延べ2,400人の参加者があった。表2にその一覧を示す。

表2 よこすか海洋シンポジウム
テーマ・タイトル
1998 「21世紀に向けて、今海洋とは」−よこすか・海洋・その未来−
1999 「海洋環境と私たちの暮らし」
−海洋気象・環境ホルモン・希少生物・三浦半島の海洋環境−
2000 「21世紀に向けて海洋からのメッセージ」
−文明の海へ・海と会話できますか?−
2001 「黒潮沿岸域の漁業と資源」
−ヒラメの一生・アナゴの不思議・アワビの資源と再生−
2002 「海洋と資源エネルギー」
−メタンハイドレード・海洋深層水・ウナギ大回遊のナゾ−
2003 「海洋と船舶〜海と船と私たちの関わり」
−船の歴史・「ちきゅう」・海と客船−
2004 「海洋と気象そして私たちの暮らし」
−海洋気象変動・エルニーニョ・地球温暖化−
2005 「海洋と地震そして私たちの暮らし」−地震と津波・活断層−
2006 「海洋と森林そして私たちの暮らし」
−森は海の恋人・鎮守の森、命の森・森と日本文明−
2007 「海洋、地球、宇宙そして私たしの暮らし」
−宇宙・地球深部探査・海洋・文化・暮らし−
2008 「海洋基本法と私たちの暮らし〜よこすかから海を知り、海を究める」
−港空研・水総研・JAMSTEC・住重−

3.2.2 横須賀市民大学海洋講座

よこすか市民会議が提案し、協力講座として9回の講座を行っている。1999年から10年間で延べ610人が受講した。東大海洋研、JAMSTECに講師派遣協力を依頼し、「海洋科学の最前線−海洋研究はどこまで進んだか」について講座を開いた。

4. おわりに

最後に若干の感想を含め提言をさせていただきたい。

  • 海は未知の分野も多くわれわれに限りなく知的好奇心と冒険心を抱かせてくれる
  • 年々発展する海洋に関する知見を得ることは、楽しく夢がある
  • 海洋環境の体験、知識の取得は地球、宇宙への関心がつながり、かけがえのない地球をいつくしむ感性と実践を育む

従って提言として

幼稚園、小学生、中学生、高校生、大学生、保護者、そしてリタイア世代等一般市民の夫々の階層に応じた普及、啓発活動を進める必要がある。特に、小学生とリタイア世代に重点をおくことが良い。子供時代の海を通した自然体験が、その後の人生に如何に重要か、また、リタイア後の人生ではともに海を通じて自然を学び、人のため、次世代のために貢献する人材が増えて欲しい。
市民文化ボランティアとして、社会性をもった海洋ボランティアのネットワーク出来ないものか。
「海洋基本法」が施工された現在、益々、民(公民)への海洋文化の普及、啓発活動が重要ではなかろうか。
産官学連携をよく言われるが、プラス民(公)の力をもつと育成すべきではなかろうか。
横須賀は三方海に囲まれ、人口の多い首都圏にあって自然環境も豊かで、「国際海洋文化都市」にふさわしいと考え、志は高く、行動は地道に海洋文化を発信して行きたい。そのため具体例として、旧浦賀ドック跡地を世界に誇る海洋文化の拠点に出来ないだろうか。

むすびとして、われわれは、「ローカル(横須賀)から、グローバル(全国、世界)へ、そして未来(次世代)へ!」をキーワードとして「海洋文化」に引続き「芸術文化」(ホームページ参照)を二つ目の柱として発信しているがやはり、「未来(次世代)へ」伝えることが最重要課題と考える。
皆様のご理解、ご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

(注)まちづくり文化ボランティアグループ「よこすか市民会議(YCC)」は1997年より活動をスタートして12年目を迎えている。会員は27名で、代表(76歳)をはじめリタイア組が中心のプロジェクト方式で運営している。(1)自主性(2)独自性(創造性)(3)社会性を基本方針としている。資金は会費、協賛金、助成金等でまかなっている。
〒239-0809 横須賀市根岸町3-3-15 横須賀YMCA内



片桐信治
よこすか市民会議代表
(KANRIN(咸臨)第26号(2009年9月)発行当時)

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