トップページ > シリーズ・読みもの > シリーズ 海学実践 > No.009 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第28号(2010年1月) より

シリーズ No.009 練習船「弓削丸」を活用した海洋・環境教育


1. はじめに

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図1 弓削商船高専の位置

弓削商船高等専門学校は、瀬戸内海のほぼ中央、愛媛県と広島県の県境に位置する弓削島(愛媛県越智郡上島町)にある国立高等専門学校である。商船学科、電子機械工学科、情報工学科の3学科(学科定員各40名、学年定員120名)から成り、海上輸送システム工学と生産システム工学の2つの専攻科(定員はそれぞれ4名および8名)を持つ、学生総数650名あまりの小規模な高専である。

商船学科は、昭和63年に航海学科と機関学科を統合・改組してできた学科で、5年半の課程(座学4年半、大型練習船実習1年)を通じて、商船教育100年の歴史をベースに、海をフィールドとした本校で、3年生までは、船舶運航技術者の基礎領域として単一クラスとし、4年生で、船長を目指す「航海コース」 と機関長を目指す「機関コース」に分かれ、海事総合科学技術を学び、海上労働の国際化、企業の国際化及び省エネルギーや環境問題にも対応できる海上輸送システムのスペシャリストの養成を目的としている。

電子機械工学科は、昭和60年に機関学科1クラス改組してできた、電気・電子系と機械系の融合した学科であり、5年の課程を通じて、ものづくりのできる実践的な技術者の育成を目的としている。

情報工学科は、昭和63年に航海学科と機関学科を統合・改組してできた学科で、5年の課程を通じて、情報処理、電気・電子工学、論理回路、制御工学などの基礎学問に加え、人工知能、画像処理、シミュレーションなどのコンピュータ応用学問を教授し、さらに情報工学実験を通じてこれらの科目を実践的に理解習得させ、高度情報化社会に即戦力として適応する情報技術者の育成を目的としている。

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写真1 練習船「弓削丸」(240総トン)

また、本校には、練習船「弓削丸(240総トン、定員56名、近海区域、1300馬力ディーゼル機関)」があり、練習船の保有、活用は商船高専の大きな特徴ともなっており、学生の航海実習や研究、他大学や研究機関等との共同研究、学校の広報活動、公開講座や研修などの地域連携など、幅広く活躍している。

本稿では、練習船「弓削丸」を活用した海洋・環境教育の中でユニークな実践例を紹介してみたい。

2. 四国地区高専連携交流事業

四国地区には、平成21年10月現在5つの国立高専がある。内訳は1つのスーパー高専(高松工業高専と詫間電波高専が平成21年10月に高度化再編され、香川高等専門学校=「香川高専」となった)、3つの工業高専(阿南、高知、新居浜)および1つの商船高専(弓削)である。

弓削商船高専の提案に他の高専が賛同・協力してくれる形で、平成16年より四国地区高専連携交流事業の取り組みが行われ、平成21年度までに年1回のペースで既に6回実施されて、恒例行事として定着しつつある。

四国地区高専間の連携・交流を推進するため、海洋・環境などに関する特別講義や航海実習を通じて、広い視野を持った技術者の養成、即戦力を備えた技術者の育成を目的としている。

教育プログラムの形式は、夏季休業期間中に4日間の日程で、弓削商船高専で実施し、4−5年生、専攻科生などを対象に、各高専から5名程度参加者を募り、各高専の教員が海洋・環境などのテーマで「特別講義」を行い、最後に仕上げとして練習船「弓削丸」で航海しながら実習を行うものである。

参加者には1単位が与えられ、単位認定は提出されたレポートで成績評価を行い、他の科目との単位互換等については各高専でそれぞれ行うことができるようになっている。

平成21年度は、7月27日から30日まで「地球資源システムと環境問題」というテーマで実施され、以下の5つの「特別講義」と2つの「実習講義」が行われた。

「特別講義」

「地球最大の資源、廃棄物の実態と今後のあり方」(詫間電波高専 細谷先生)
「熱工学的視点からのエネルギー環境」(新居浜高専 下村先生)
「分散型電源の環境および性能評価」(高知高専 竹島先生)
「資源としての水について考える」(阿南高専 橋本先生)
「海洋エネルギー資源の活用技術」(高松高専上代先生)

「実習講義」

「操船と舵」(弓削商船高専 豊田先生)
「舶用機関システム」(弓削商船高専 松永先生)


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写真2 平成21年度四国地区高専連携交流事業
参加者の集合写真

今回の参加学生は30名(男子18名、女子12名)で、5年生が19名、4年生が11名、学科別では機械4名、建設環境4名、電子工学6名、情報工学2名、電子制御4名、電子機械5名、電気情報1名、建設システム3名、物質工学1名、高専別では高松8名、詫間9名、新居浜4名、高知4名、弓削5名という内訳であった。

参加者アンケートの結果を以下にいくつか紹介したい。

特別講義等に対する満足度については、「十分に満足した(57%)」、「概ね満足した(43%)」。特別講義等で特に興味があったものについては、「弓削丸関係(27%)」、「海洋エネルギー資源の活用技術(7%)」、「資源としての水について考える(7%)」。練習船「弓削丸」での実習については、「よかった(90%)」、「普通である(10%)」。その他、全体の意見としては、「貴重な体験ができた」、「他高専の学生との交流がもっとできる時間が欲しかった」などがあった。

3. おわりに

本稿では、練習船「弓削丸」を活用した海洋・環境教育の実践例として、平成16年から本校で毎年実施している四国地区高専連携交流について簡単に紹介した。

このような取り組みを高専間で連携して実施している地域は四国地区だけであり、かつ、商船高専にしかない練習船を活用して、他高専の学生にも実践的な海洋・環境教育を単位付与の特別講義形式でおこなっている点は非常にユニークであると思われる。



多田光男
弓削商船高等専門学校
(KANRIN(咸臨)第28号(2010年1月)発行当時)

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