横須賀港は、港や漁港を持つ全国40地域のなかから選ばれた、「女性が訪ねてみたい港町」において第8位となっています。
しかし平成19年の全国港別貿易額では、輸出4,022億円全国19位、輸入794億円全国60位と低迷しており、港としてのキャラクターは、客船や貨物船等多くの船が入出港する海を主体とした「港町」ではなく米軍基地、観音崎灯台、どぶ板通り、歌謡曲(山口百恵、ダウンタウンブギウギバンド、クレイジーケンバンド等の楽曲での紹介)などから町のイメージを主体とした「湊町」に先行されています。
今横須賀では、先行されたイメージに追いつくように海沿いのプロムナードとしての「うみかぜの路」の整備、遊覧船による「軍港めぐり」や東京湾唯一の自然島である「猿島」への渡船等、湊の拠点を遊覧船でつなぐ「海の回廊計画」を進めています。
今回の「港の横顔」は、そんな湊「横須賀」の「うみかぜの路」を主体に紹介させていただきます。
写真1 スチームハンマー
「うみかぜの路」は、JR横須賀駅を起点に日本最古の洋式灯台が起工された観音崎までの約10kmを海沿いのプロムナードでつなぐものです。それでは出発です。起点には、横須賀製鉄所を建設したフランス人「フランソワ・レオン・ヴェルニー」の名を冠した公園や記念館があり四季を通じて約2,000本のバラが楽しめ、また記念館には、横須賀製鉄所で100年に渡り活躍したスチームハンマーが展示されています。公園に面する港は、自衛隊や米軍に利用されており、様々な軍艦が係留され横須賀特有の景観を醸し出しています。
次に向かうのは、三笠公園になります。途中の国道16号に沿った中通りが「どぶ板通り」です。戦後は横須賀に駐留した米軍の歓楽街として栄え、現在でもスーベニアショップやバーなど面影を残しつつ、米軍の払い下げ品やスカジャンなどアメリカの雰囲気を味わえます。三笠公園に到着しました。華麗に舞う噴水などがあり「都市公園100選」に選ばれています。園内にはイギリスのヴッカース社で建造され日露戦争時の旗艦として東郷平八郎司令長官が座乗した軍艦「三笠」が保存されています。
写真2 三笠公園の軍艦「三笠」
写真3 うみかぜ公園(円形花壇)
次に横須賀港の外貿を担う新港ふ頭を左に眺めながら「うみかぜ公園」に向かいます。
「うみかぜ公園」は、猿島が眼前に浮かぶ多目的な公園で芝生広場や円形花壇などがありバーベキュー等をしながら家族連れでゆったりできる公園となっています。スポーツ派には、スケボー、3オン3やマウンテンバイクなどが楽しめるエリアもあります。
公園前に面した臨港道路には、様々なオブジェが展示され次の海辺つり公園に誘います。
「海辺つり公園」は、延長約500mの釣広場があり猿島や房総半島を眺めながら釣りを楽しむことのできる人気のスポットです。
写真4 馬堀海岸高潮護岸
国道16号沿いに観音崎に向かいます。
途中の約1.6kmにおよぶ馬堀海岸は、高潮対策として整備された護岸を利用したプロムナードが続いています。プロムナード゙沿いには、フェニックスが植えられ緑陰を作り出し、散歩やジョギングに利用されています。前面の海域では、海苔やワカメの養殖等が行なわれています。
また、この海岸護岸は、国の直轄事業で施行され、ユニバーサルデザイン大賞や土木学会技術賞を受賞しており、環境・利用・防護機能共に非常に高いレベルの施設となっております。
写真5 横須賀美術館
天気の良い日には、後に富士山を眺めながら観音崎に向かいます。30分ほど歩くと終点の観音崎です。 2007年4月にオープンした横須賀美術館や観音崎灯台、浦賀水道航路の船舶航行の安全を監視している東京マーチス、県立観音崎公園等が点在しています。
美術館や海沿いのホテルでは、浦賀水道航路を行き交う様々な船を眺めながらの食事や入浴が楽しめますので10km歩いて疲れた身体をいやしてください。
お疲れ様でした。帰路はバスでのんびりと最寄の駅に帰るもよし、元気があれば、ぜひとも観音崎の突堤から猿島を経由して三笠公園に至る遊覧船に乗り潮風にあたりながら猿島にも寄ってみてください。
緑深い木々の中、旧軍施設のレンガ積みのトンネルなどが残り、ちょっとした探検気分が味わえます。
横須賀へいらしたおりには、ぜひ散歩でもしながらすてきな湊「横須賀」を発見してください。
鈴木栄一郎(すずき えいいちろう)
横須賀市港湾部港湾企画課
上席主査
港湾計画
(KANRIN (咸臨) 第22号 (2009年1月) 発行当時)