トップページ > シリーズ 港の横顔 > Vol.007 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第23号(2009年3月)より

シリーズ 港の横顔 Vol.007 長崎港「クルーズ船に出会える港」


1. はじめに

長崎港は元亀2年(1571年)ポルトガル船の来航がきっかけとなり開港されました。徳川幕府時代は、埋立てにより築造された「出島」でオランダ通商を行い、鎖国時代唯一の海外への玄関口として、海外の産業・文化の受け入れに重要な役割を果たしてきました。明治時代には上海航路をはじめとしてオーストラリア、フィリピン、北米方面等の連絡船が寄港する歴史ある貿易港として発展しました。


現在の長崎港 港内から港外を眺める

昭和に入ると経済成長とともに出入港船舶や貨物量が増加したため、小ヶ倉柳地区外貿ふ頭の整備、深堀・香焼間の工業用地造成などを行い、工業港としての新しい性格を造り出してきました。昭和63年からはナガサキ・アーバン・ルネッサンス2001構想のリーディングプロジェクトとして内港再開発事業が進められ、国際観光都市“ナガサキ”にふさわしい海の玄関口の整備が行われてきました。また平成17年12月には、港湾貨物輸送の円滑化と陸上交通の隘路解消として「女神大橋」が開通し、1日の交通量が5,500台と多くの市民のみなさんに利用されています。

今回は、国際観光都市“ナガサキ”にふさわしく、海外との繋がりを持つという点では昔と変わらない「国際クルーズ船の寄港」ついてご紹介します。

2. 多くのクルーズ船が寄港する港“長崎”

近年、アジアクルーズや世界一周クルーズで九州に寄港する国際クルーズ船は年々増加しつつあります。地元ではクルーズ船寄港による港の賑わいや観光振興に期待が寄せられています。

そのような中、長崎港は国内でも有数の国際・国内クルーズ船の寄港地となっています。平成18年に長崎港に寄港した国際クルーズ船は52隻を数え、横浜港、神戸港をおさえて、日本一となりました。


2隻同日に寄港したクルーズ船(稲佐山より)

長崎港には松が枝国際旅客船ふ頭と出島国際旅客船ふ頭の2つの旅客船ふ頭があります。最大2隻のクルーズ船が同時に入港することができるわけです。実際に年に数回、それぞれのふ頭にクルーズ船が同時に接岸している姿を見ることができます。このような2隻同日寄港は日本の中でも限られた港でしか見ることの出来ない光景ではないでしょうか。

それでは、長崎港に多くの国際クルーズ船が寄港する要因はどのようなところにあるのでしょうか。次のようなことが主な要因と考えられているようです。

まず、「アジアに近いという地理的特性」です。アジアクルーズの人気でアジアに近い長崎はクルーズコース上の寄港地としても人気があります。次に「被爆地“ナガサキ”としての世界的知名度」です。最後に「港のすぐそばに繁華街や観光名所が存在すこと」です。港から徒歩または路面電車(なんと!どこまで乗っても大人片道100円)で市内の観光地(グラバー園、中華街、原爆資料館など)巡りが出来ます。また、バスツアーに参加すればハウステンボス(佐世保市)や島原半島巡りなど、限られた滞在時間の中で長崎の魅力を堪能することができます。

そして長崎港に毎年多くの国際クルーズ船が寄港する要因として忘れてはいけないことがあります。それは、官民一体となった国際クルーズ船の受入体制です。クルーズ船の誘致・寄港はクルーズ船を受け入れる側のサポートがなければ成り立たないことです。国際クルーズ船の誘致を行っている方々にお話しを伺うと「国際クルーズ船の誘致は、行政や船舶代理店、CIQ(税関・出入国管理・検疫)、市民のみなさんをはじめとした多くの人々の協力がなければ成功しません。“おもてなしの心”が大切ですよ。」と教えてくださいました。


クルーズ船寄港時の歓送迎セレモニーの様子
(和太鼓演奏、ブラスバンド演奏)

長崎港に国際クルーズ船が寄港した際、私が個人的に楽しみにしているものがあります。それは歓迎行事の数々です。消防艇の放水、船内での歓迎アトラクション(日本舞踊、ダンスなど)、ブラスバンド演奏や和太鼓演奏などの歓迎イベントが行われています。

特に送迎セレモニーには何処からとなく人々が岸壁エプロンに集まり、旅客はデッキに出てきて、和太鼓やブラスバンドの演奏に拍手をしたり、踊ったりと長崎の人々との触れ合いを楽しんでいる様子が伝わってきます。最後は手を振ってのお別れとなり、旅客を乗せたクルーズ船は次の港へ旅立っていきます。

3. 日本最大級の旅客船岸壁が完成


松が枝国際旅客船ふ頭

平成20年11月、松が枝国際旅客船ふ頭は新しく生まれ変わりました。

昭和60年3月に完成した松が枝国際旅客船ふ頭は当時、5万トン級のクルーズ船に対応する水深12m(延長275m)の岸壁でした。しかし、近年の船舶の大型化に伴い、長崎港にやってくる大型国際クルーズ船も年々増加し、10万トン級のクルーズ船に対応する岸壁の整備が必要となってきました。三菱重工業(株)長崎造船所で建造されましたサファイアプリンセス等の大型クルーズ船が長崎港に里帰りし岸壁に係留する際、タグボートを常時スタンバイさせるなどの安全対策を講じなければなりませんでした。

そこで長崎港湾・空港整備事務所では既存の水深12m岸壁(延長275m)を85m延伸し、延長360mとする工事に平成17年度に着手し、平成20年11月に完成しました。船舶の大型化に対応するため、延伸部の水深5.5m部分を水深12mまで掘り下げる工事をはじめ、船舶接岸時に緩衝材の役目を果たす防舷材や、船舶を係留する際に使用する係船柱の取替えも行いました。さらに岸壁のエプロン部分については、景観にも配慮したデザインとなっています。

4. おわりに

日本最大級の旅客船岸壁の完成により、10万トン級の大型クルーズ船の安全・安心な接岸が可能となりました。本年も多くのクルーズ船の寄港を心よりお待ちしています。


渡邉賢二(わたなべ けんじ)

国土交通省 九州地方整備局 長崎港湾・空港整備事務所
企画調整係長
港湾計画及び長期計画
(KANRIN (咸臨) 第23号 (2009年3月) 発行当時)

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