トップページ > シリーズ 造船所のかっこいいオヤジ > Vol.007 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第14号 (2007年9月) より

シリーズ 造船所のかっこいいオヤジ 鋼鉄の鬼軍曹

1. イントロダクション


溶接中の佃さん

第7回目となるこのシリーズ、溶接関連では二人目のかっこいいオヤジとなりますが、日本船舶海洋工学会の紳士・淑女の皆さんに誇りを持って、今治造船より紹介させて頂くのは、「佃 輝夫」さんです。弊社の丸亀事業本部では社員、協力会社を含め知らない人のいない存在であります。

現在65歳の佃さん、操業間もない丸亀事業本部に昭和48年に中途入社されてから、主として外業チーム一本で勤務されていました。

そんな通常業務の他にも技術を買われ、平成元年からは弊社、くわえて平成4年からは協力会社の新規雇用者の溶接指導も兼任されるようになりました(大学からの夏季実習生も担当されているので、今これを読まれている方の中にも、お世話になった人がいくらかおられることかと思います)。

そして、5年前に定年退職することになりましたが、現在も関連会社の(株)トランステックに所属し、弊社多度津事業部の研修センターにて日々、新規雇用者への技術指導を行っています。

2. 「サージェント・サンダース」

そんな佃さんを一言で言えば、映画によく出てくる訓練担当の鬼軍曹殿です。

現場に配属される者は社内のみならず、社外からの溶接免許を所持する造船業経験者でも、佃さんのガス切断や、溶接のチェックをパス出来ないことには現場配属はされません(高卒正社員については2年前に今治地域造船技術研修センターが出来てから、所轄が離れたそうですが、かくいう小職も含め大卒社員は皆、入社時研修にはお世話になりました)。

もちろん、映画でお約束の○○○野郎とかの汚いスラングや、腕立て伏せなどのスパルタ教育はありませんが、甘やかすことが本人のためにはならないとの信念で時には雷を落とすほど厳しく、時には親身に指導してくれる、丸亀事業本部の発展を陰で支えてくれた名軍曹殿であります(普段はにこやかでとても気さくです)。

3. 『お熱いのがお好き』

そんな佃さんの持つ技術は、もちろん指導能力だけではありません。溶接技量に関しても社内に右に出るものはなく、この取材時でも、実演した練習ピースのビードを見せて頂きましたが、下向突合せ溶接かと思っていたものが、実は立向突合せ溶接によるもので、あまりに綺麗なのでびっくりさせられました(下写真をご覧ください)。


研修生(左)と佃さん(右)の作品

それでも年をとってかなり腕が落ちたとご謙遜。

4. 『エレキの若大将』

そんな見事な職人技を持つ佃さんでも、やっぱり自動化には敵わないと話します。

「エレガス(エレクトロガス溶接:ブロックの立向自動溶接)を導入した時も、最初は誰も使おうとせんかった。上司のやってみんかという言葉から、何とか使えるようになるまでは一人でいろいろ思考錯誤したもんやわ。おかげでえらい便利になったで、あの速さは人ではとても敵わんもんな」とちょっぴり誇らしげでした。

驚くことに、エレガスではありませんが自動溶接法についても、会社と連名で特許を取得しています。

その佃さんの技術の秘訣は?「それは、自分を器用に産んでくれた親のおかげやな、感謝しとる。他にもある程度の努力もあるが、やはり技量では誰にも負けたくはなかった」 と負けず嫌いの努力家であることも秘訣のようです。

5. 『明日に向かって(熱い内に)うて』


研修生とのスナップ(左から 3番目)

そのような職人である佃さんの指導であるからこそ、研修生達は少しでも技術を盗もうと、日々技術習得に励んでいます。

しかし、新人指導を行うに当たり、体が大きく態度の悪い者や、不器用な者も珍しくはありません。それでも小柄な佃さんはひるむことなく怒り飛ばして指導します。

「ケンカになったらもちろん勝ち目はないが、それでもちゃんとバシッと言って聞かせてやることが大事や。言われたことができんようやと、やっぱり仕事が面白うなくなるやろ、そんなんで辞めていくのも可哀想やからな。とにかく船は鉄板を切ったり、貼ったりが基本やから、ガス(切断)と電気(溶接)はしっかり覚えさせてやりたいんや」そう笑顔で話されました。

そんな若手に対するアドバイスとして、「どうせやるなら人に負けるな、人の後をついて行くよりも、やる気と技量を持っていたら何でもできる。誇りも持って仕事をやったら会社が面白うなる」、との言葉を頂きました。

6. 『プライベート ツクダさん』

プライベート(二等兵の意味ではない)では、以前は、朝まで呑んでからそのまま出勤するほどの猛者だったとか。しかし、医者に止められてからはぴたりと止めたと言います。

それでもタバコだけは「吸わん方がええけどな」と言いながらも止められない佃さん。以前禁煙した時は溶接でしゃがむのがきついほど太ってしまい、挫折してしまったそうです。

そんな佃さんの休みの日の過ごし方には奥さんと買い物等で過ごされる微笑ましい一面も。

7. 『(造船)ショーほど素敵な商売はない』

最後に、今までに対する感想を聞くと、「僕はこの会社に入社してホンマに感謝している。やりがいがあったし、何でも好きなことをやらしてくれた。会社も上司も良くしてくれたから、それに応えられるようには努力してきた。やってくれ言うて頼まれた仕事はしてきたつもりやし、やった甲斐もあった。それで今まで会社がつらかったことはない」と充実した活躍の場があった会社にはいたく感謝されていました。

8. 「老兵は死なず!」


これからも頑張ってください。

2007年問題の真っ只中、フル回転の最前線では一人でも多くの職人が必要とされています。

佃さん、これからも一人でも多くのヒヨッコ新兵達を、一人前の職人として叩き上げてくださいますよう、よろしくお願いします。


泉 尚吾(いずみしょうご)

今治造船(株)造船設計グループ 船体設計チーム
係長
(KANRIN (咸臨) 第14号 (2007年9月) 発行当時)

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