トップページ > シリーズ 造船所のかっこいいオヤジ > Vol.008 - 学会誌 KANRIN (咸臨) 第16号 (2008年1月) より

シリーズ 造船所のかっこいいオヤジ 品質管理・最後の砦を守るおやじ

1. はじめに

今回は、品質管理部という職場で新造船の製造過程を見守るかっこいいおやじ、(株)アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(以下IHI MU)呉工場の岡田孝司(おかだたかし)さんを紹介します。

2. 『絶対壊れない船を作る。』

学生の皆さんは船の品質管理といっても、どんな仕事をしているのかピンと来ないかもしれません。まずは岡田さんの業務について紹介しましょう。

皆さんが家や車を買う時のことを考えてみてください。同じ値段なら性能や外観、信頼性、耐久性のより良い製品を買いたいと誰もが願い、又、そういった製品に出会えた場合は大きな満足を得ることでしょう。性能や外観は設計で決まります。しかし信頼性や耐久性は、品質管理の積み重ねで得られるものなのです。

JIS1)には「品質管理とは、買手の要求に合った品質の品物又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系」と書かれていますが、岡田さんのミッションは至ってシンプル『絶対壊れない船を作る。』です。

岡田さんはエンジンを除く船体すべての検査業務にかかわります。具体的には、船級協会の検査員や客先の駐在監督とともに船体ブロック検査、渠中のブロック接合部溶接検査、各種艤装品の作動確認検査、非破壊検査を行います。これら検査を通して、船がルールや契約で決められた性能を有しているかを確認するのです。

また、造船所内での検査業務だけでなく、部品を製作する会社の品質管理体制の良し悪しを判断し、造船所に入ってくる品物がこちらの要求とおりの物であるか確認する業務もあります。さらに、建造中の不具合やクレームに対して、その処置や再発防止を取りまとめ、将来同じことを繰り返さないように道筋を作ることも岡田さんの重要な業務です。

以上「具体的」説明は小難しいですが、根底に流れる想いは、『絶対壊れない船を作る。』です。岡田さんはこの想いの下、40年にもわたって、船の品質管理に携わってきました。

3. 身も心もタフでなければ


岡田さん仕事モード

昭和42年、岡田さんはIHI MUの前身のIHI、そのまた前身の(株)呉造船所に入社されました。 4年間、現場でガス職(ガス切断でブロックを切り合わせる仕事。造船は切った貼ったが基本!)として従事した後、検査課(現在の品質管理部の前身)に異動、そこで非破壊・溶接検査担当となりました。これが品質管理業務との長い付き合いの始まりでした。

以降、携わってきた仕事は、検査課での非破壊・溶接検査担当を17年(そのうち艤装詳細設計で2年勉強、LNG船の非破壊・溶接検査を6年担当)、現在の品質管理部で前述の業務に従事して20年。造船の裏も表も知り尽くした超ベテランです。


岡田さん品管業務モード(監督さんと一緒に)

皆さんは品質管理という言葉からは想像できないでしょうが、船主・船級協会との交渉窓口となり、現場をくまなく歩きまわり、物の良し悪しなど重要な判断を迫られるその業務は、身も心もタフでなければ務まりません。豊富な知識も必要です。

非破壊検査と溶接の知識、 LNG船の経験だけでなく、『絶対壊れない船を作る。』というミッション、これがブレない岡田さんは誰からも信頼され、この人が言うのなら納得、という人物なのです。

4. 手を抜かない

4.1. スポーツ


岡田さん鉄人モード

岡田さんは鉄人です。鉄人にもいろいろありますが、鉄人レースに出場するような鉄人です。学生時代から野球をやっており、入社後も怪我をするまでは本格的に取り組んでいました。怪我をして野球を趣味レベルにしてからも、常に勉強すること、体を鍛えることを忘れていません。ジョギング、自転車、水泳を続け、ついにはトライアスロンやフルマラソンにも出場しています。今でも腹筋は割れていてとても59歳とは思えません。

4.2. 地域活動


岡田さんお祭り(奴姿)モード

仕事同様、地域の活動でも手を抜いていません。倉橋島の音戸町という歴史ある町に住む岡田さんは、地域イベントには欠かさず参加、祭りとなれば奴(ヤッコ)姿で行列の先頭を歩きます。

また、単身で呉に駐在している客先監督を島に招くなど、心遣いが繊細な所もみんなから信頼を得ている所以です。小生も同じ職場の同僚になってからは、いろいろなイベントに招待してもらいました。

4.3. 趣味


岡田さん釣人モード

仕事にスポーツに地域活動にと幅広い活躍をされている岡田さんですが、本人曰く「趣味は魚釣り」だそうです。腕前は…ご想像におまかせします。

5. おわりに

団塊世代の岡田さんが現在取り組んでいる大きな課題は、もちろん技術の伝承です。定年までに後輩に対していかに多くのノウハウを残せるか。小生も岡田さんから多くのことを学びましたが、まだまだ未熟です。最近では、さすがの岡田さんにも焦りのようなものを感じているように思います。(小生が焦っているだけなのかもしれませんが)『絶対壊れない船を作る』最後の砦としてブレないこと。私たち後輩はこのミッションを引き継いでいかねばならないと思っています。

参考文献

1)JIS Z 8101-2 統計用語と記号第 2部:統計的品質管理用語


浅田 拓蔵(あさだ たくぞう)

(株)アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド
呉工場 品質管理部
課長
(KANRIN (咸臨) 第16号 (2008年1月) 発行当時)

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