トップページ > シリーズ 造船所のかっこいいオヤジ > Vol.016 - 学会誌 KANRIN(咸臨) 第32号(2010年9月) より

Vol.016 匠の交渉術

1. はじめに


出口 哲郎さん

サノヤス・ヒシノ明昌水島製造所のかっこいいオヤジ、工作部船装課係長の「出口 哲郎さん」を紹介します。

出口さんは昭和47年にサノヤス大阪製造所に入社し、翌年の昭和48年に当時新しく建設されたばかりの現在の職場の水島製造所に配属されました。

入社当時は現場で溶接工をしており、その後配管関係の仕事をされ、設計に配属、平成2年に現場の修繕課で修繕船の仕事をした後、現在の船装課に配属されました。

私(重住)が平成14年に入社してから、しばらくの間、出口さんには私のビッグボーイ(新人の教育係)をして頂き、私に新造船の船装係の仕事のイロハを親切丁寧に教えてくれました。

また当時から出口さんは顔が広く、一緒に現場を回っている時に多くの人から声をかけられ私のビッグボーイは凄い人なんだと感じた事を覚えています。

この記事の依頼がきた際にもサノヤスなら出口さんでしょう!とすぐに名前が挙がってくるほどの有名人です。

2. かっこいい仕事ぶり

私(片山)は平成17年に入社し地上艤装ステージの担当をしていましたが、最近は艤装船の担当になり、今は出口さんのOJTの指導のもとで船を見ています。

一緒に仕事をしている時に感じた、出口さんの凄い所をいくつか挙げてみたいと思います。

まず、人柄の良さは言うまでもないのですが、それが最大限に活かされている交渉術が凄いんです!

交渉相手は他ショップの職人さんや係員と様々です。例えば、作業工程の調整をする時などでも、現場でスタッフや職人を捕まえては「どんなんな?」と世間話から始まり、仕事の話に入ったかと思えば冗談を交えながら「いいじゃん♪よろしく♪」とか言いながら、気づけばアッという間に工程が整ってしまいます。

検査立会いで船主監督や船級検査官を相手にした時でも、スムーズに検査を行えるように進め方を上手に提案して、相手を納得させた上で検査を受けるといった事も簡単にやっている姿を見ると“さすが!”と思います。

また人柄が良いせいか、担当業務を問わず様々な人が頻繁に相談に訪ねて来ます。出口さんときたら「あん?めんどくせーなー。おい、あっちいかんか」と決まって面倒くさそうに喫煙場所に相談者を連れて行き、タバコを吸いながら親身になって相談にのってくれます。そしてすぐに関係する設計の担当者を呼び寄せて問題解決に協力してくれるのです。そうやって呼び出しにすぐに対応してくれるのも、出口さんだからこそなんだろうなぁ…と、いつも感心させられています。

ほんの一部ですが、私が出口さんと一緒に仕事をしている上で感じた“かっこいいオヤジ”を紹介しました。プライベートでも、噂に違わぬオシドリ夫婦だそうで…そういった仕事以外でも“かっこいいオヤジ”な出口さんに感服しています。

3. インタビュー

Q.
今までの経歴を教えてください。
A.
昭和47年に大阪で入社し、翌年の昭和48年に水島に配属され入社時は現場で溶接をしていました。その後パイプ関係の仕事をしている時期に設計に応援に行って、そのまま設計に配属され、平成2年に修繕課で修繕船の仕事をした後、船装課に配属され現在に至っています。
Q.
造船(船装係)の魅力について教えて下さい。
A.
船装係は主に艤装品の取付、各機器の据付から作動調整と機関室を除く全ての区画で様々な作業をする所が魅力だと思います。
Q.
会社生活で一番大変だった時期は?
A.
そうですね、やはり修繕課で仕事をしていた時が一番大変でした。当時は修繕船が多くて毎日夜遅くまで、土日も出勤という事が一番大変でした。しかし修繕課では船殻から艤装まで様々な仕事をしたのでやりがいはありました。
Q.
今までで一番苦労した経験は?
A.
十数年前のルール改正により初めてレスキューボートの5ノット進水テストを行う事になった際に要領書を作成した事ですね。その時はメーカー図や色々な本を読んで勉強したり、頭の中でシミュレーションしたりして安全対策を十分考えながら作成し、実際にテストを行った後も、何度も何度も修正してやっと要領書を完成させたので本当に苦労しました。
Q.
海上試運転での思い出のエピソードは?
A.
以前は新造船の出渠から完工までを担当していたので、かなりの数の試運転に乗船しましたが、その中でもフォアマストのエアーホーンが止まらなくなって、航海中にマストの上に登りエアホーンの修理をした事がありました。その他にも台風による強風の影響で乗船した船が2隻続けて着岸出来ず、翌日まで沖待ちして予定日に帰れなかった事もありました。
Q.
プライベートについて教えて下さい。
A.
趣味は、以前はよく釣りをしていましたが、最近は下手ですが少しゴルフをしています。スコアはなかなか100を切れませんが…。
Q.
仕事をする上でいつも注意している事は?
A.
私は船装課で仕事をしていますが、船を造るには他部課の協力も必要なので互いに連絡を取り合いながら、スムーズに仕事が出来る様にしています。特に現場では他課の職人さんやリーダーの方と雑談をしながらコミュニケーションを取っています。
Q.
今後の課題、目標を教えて下さい。


若手教育の講師をしている出口さんの様子

A.
近年、技能伝承の取り組みで船装現場の若手を教育していますが、今後は設計も巻き込んで若手教育を行いたいと思っています。
Q.
若手社員へのアドバイスをどうぞ。
A.
私は入社以来、溶接職からパイプ・設計・修繕・船装と色々な仕事を経験した事が現在の仕事に非常に役立っていると思います。若い人には出来る限り、他の仕事を見たり聞いたりして自分の仕事に活かして欲しいと思います。

4. おわりに

出口さんは多くの人を惹きつける魅力があります。周りを納得させる交渉術と豊富な経験から出てくるアイディアは、かっこいいオヤジとしてサノヤスで輝き続けています。


重住   光啓(しげずみみつひろ)

(株)サノヤス・ヒシノ明昌
水島製造所 工作部 船装課
船装係 係員
新造船 船体部艤装工事 工事管理

片山   洋吾(かたやましょうご)

水島製造所 工作部 船装課
船装係 係員
新造船 地上艤装 艤装船工事 工事管理
(KANRIN (咸臨) 第32号 (2010年9月) 発行当時)

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