
1. はじめに

電気職場 職長 川本 渉さん
今回尾道造船から紹介するのは、船になくてはならない「電気」に関わる仕事を取りまとめる、電気職場の職長、川本渉(かわもとわたる)さんです。
川本さんは市内の高等学校工業科を卒業後、昭和42年に当社に約100人の同期と入社、それから44年間電気畑一筋で現在の電気職場を支えてきた人物です。こんな大人物ですが、工場内で見かけた際には、気さくに大きなしゃがれ声で自分から手を揚げ挨拶をしてくれる元気の良い人です。
2. 電気職場の大黒柱
そんな川本さんについて、職場の方々に聞いてみました。まず1人目は、現在、電気職場組長として川本さんを支える入社37年目の池内久雄さんです。
「川本職長は誰もが認める電気職場の大黒柱で、とにかく段取りが良いです。新造船・修繕船のどちらの工事においても、人やクレーンの手配がとにかく早く、パッと頭の中で作業手順を組み立てることが出来る人ですね。判断に迷いがありません。」
2人目は今年入社した、新入社員の立石愼太郎くんです。「川本職長は現場を駆け回り、どの仕事場にも必ず顔を出してくれます。朝も帰りも、仕事中どこにいても必ず自分に声をかけてくれ、仕事も自ら教えてくださいます。これからも、もっともっとたくさんのことを教えてもらいたいです。」
どんな仕事でも引き受け、自ら足を運んで状況を把握しながら最前線で判断し、問題があれば他部署との折衝を行いながら解決していきます。
2人の話からも川本さんは、1人1人が働きやすい環境を整えるためにとにかく現場を駆け回っている、電気職場の大黒柱であることが分かります。
そんな信頼の厚い川本さん率いる職場のメンバーは、個々の仕事だけでなく、みんなで一つの仕事をすることも多いため、結束力があります。
チームワークの良さが仕事以外の面にも表れており、社内で行われる職場対抗ソフトボール大会では、川本さんが監督として選手を叱咤激励し、また川本さん本人も選手として出場しています。結果は、昨年が優勝、今年が準優勝というとても優秀な成績を収めています。
3. インタビュー
さらに川本さんの魅力に迫るため、直接お話を聞かせていただきました。
- Q.
- 入社のきっかけを教えてください。
- A.
- 実家が造船所の前にあったことと、父親も仕上職場(主に主機と補機の整備・調整をする職場)の職長として働いていたので、度々ここを訪れていました。いつも仕上職場の人たちに可愛がってもらい、その頃父親には、「仕上職場はいろいろと大変だから、電気職場に入ればいいんじゃないか」と勧められていましたが、気がついたらその通りになっていました。(笑)
- Q.
- 入社当時のエピソードを教えてください。
- A.
- 当時はD/W17,000トンクラスの貨物船を多く造っていて、大八車(押し車)で電線を運んでいました。約100人の同期とともに入社してからは、常に「同期に負けたくない」「上の人にもそのまた上の人にも負けたくない」という一心でした。いくら父親が同じ会社で働いているとはいえ、当時約2,000人が働く工場内で、一人でも多くの人に名前を覚えてもらうために、まずはとにかくあいさつをしました。名前を覚えてもらえると、例えば道具を借りることがスムーズに出来ます。そうすることで、仕事が段取り良く進められ、みんなより一歩リード出来ました。若い人にも、まずはあいさつをしっかり行ってもらいたいですね。それが、仕事を早くすることにもつながります。
- Q.
- 思い出に残る仕事を教えてください。
- A.
- スリランカにあるコロンボドックヤードへ、尾道造船建造の340番船「ONOZO SPIRIT」が修繕工事のため入渠した際、現地から急遽、応援要請がありました。尾道での仕事が終わった後、その足で飛行機に飛び乗り、コロンボへ渡りました。現地に行ってみると、コロンボドックヤードの作業員の中には、研修生として尾道造船所に来たことのある者もいました。お互いに顔見知りであったため、指示等の意思疎通がスムーズに行き、復旧工事を無事完工することができました。おかげでオーナーもとても喜んでくれたことが思い出に残っています。
- Q.
- 仕事に取り組む際に心掛けていることを教えてください。
- A.
- 仕事が来たら「はい!やります!」「はい喜んで!」の精神で引き受けることを心掛けています。また、先のことを考え、電気職場のメンバーをいかに配置するかを考えます。そのために、事務所でじっとしていることなく、とにかく現場を回り、1人1人の仕事力を見て判断するようにしています。自分の能力を上げることよりも、個々の力を少しでも引き上げてやることが大事です。
- Q.
- スキー、ダイビング、海外旅行など多彩な趣味をお持ちだと聞いていますが、リフレッシュという目的以外にそれらが仕事に役立ったことはありますか?
- A.
- コミュニケーションを取る際の話のネタになります。例えば、旅行であれば、遠方から来た新入社員との会話に役立ちます。彼らと出身地の話をすることでコミュニケーションを取ることができ、スムーズに仕事に入ることができます。
- Q.
- 最後に若手社員へのメッセージをお願いします。
- A.
- これからは若手が中心になってきます。まずはなにより安全。怪我の無いように、健康で仕事を行ってほしいです。その上で、早く仕事を覚えて実力をつけて欲しいですね。頑張っていれば力は必ず付いてくるので、一生懸命取り組んでもらいたいです。
4. おわりに

笑顔で若手社員と話す川本さん
尾道造船とともに育ってきたと語る川本さん。「誰にも負けない」という信念から始まった造船マンとしての人生。入社当時70人ほどいた職人が19人になった現在では、いかに仕事を回していくかを常に考え、不具合が発生した折には、自らが現場におもむき現場を駆け回りながら電気職場を支え、若手の手本となっています。写真からも分かるように特徴ある(笑顔の素敵な)顔でグイグイ意見を言い周りを束ねていく様子は、まさに「かっこいいオヤジ」と表現するに値します。
今回の取材を通して、私達若手社員は、積み重ねられてきた技術はもちろんのこと、広い視野で物事を見る姿勢や、どんな仕事でも引き受ける熱い志を受け継いでいかなければならないと強く感じました。
橋本 真衣(はしもとまい)
尾道造船(株) 人事部 人事課
(KANRIN (咸臨) 第40号(2012年1月) 発行当時)
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