平成16年造船技術賞(吉識賞)に吉田宏一郎先生

造船技術賞審査委員会



 平成16年度日本造船学会・造船技術賞(吉識賞)は、東京大学名誉教授吉田宏一郎先生に授与されました。

 先生は愛知県のご出身で、東海高等学校をへて昭和36年3月東京大学工学部船舶工学科をご卒業、その後、大学院に進まれ昭和41年3月に博士課程修了、工学博士の学位を授けられ、直ちに東京大学講師に任ぜられました。昭和42年4月には助教授、昭和59年には教授に昇任されました。学内では東京大学海洋研究所協議会委員など数多くの要職を歴任され、平成11年 3月にご退官なさるまで、船舶工学、海洋工学などの分野の教育研究、さらには学内の行政に携わってこられました。また文部省、科学技術庁、運輸省、通商産業省そして文部科学省や国土交通省を中心として、学術審議会専門委員会、海洋開発審議会、科学・学術審議会海洋開発分科会などの委員会に参加され、多くの重要な政策の方向を示されました。東京大学ご退官後は東海大学海洋学部マリンデザイン工学科教授として後進の教育を、平成16年度からは独立行政法人海上技術安全研究所客員研究員として後進の指導をしておられます。

 先生のご研究は、骨組構造の塑性崩壊に関して、軟鋼の塑性変形能力を利用した構造設計法に関する基礎的研究をはじめ、平板構造を構成する要素構造の弾塑性域における座屈強度に関する研究を精力的に進められ、帯板要素の開発を行われました。

 またわが国の造船業が開発に取り組んだ海洋構造物について、波浪中応答解析法を開発し設計に大変貴重な知見を与えられました。さらに関連して構造強度を支配する溶接継手について内力の伝達機構、疲労強度に関する研究をなさいました。また、新形式の海洋構造物として登場しつつあった緊張係留プラットフォームについて、いち早く波浪中応答解析法手法を開発し、応答解析と特性把握を行い全体構造設計への指針を提示なさいました。この成果は現在世界で広く参照されている設計基準に反映されています。さらに支持構造であるレグのネジ継手における軸力の伝達メカニズムを、詳細な弾塑性有限要素法により明らかにされました。

 先生の海洋構造物に関するご研究は、超大型浮体による海洋空間利用に関する計画・設計の研究に発展し、応答解析法の開発に加え、海上都市、海上空港など多くの先駆的計画を提示されました。これらは現在のメガフロート研究を推進する大きな原動力となるとともに、この方面の研究においてわが国が世界の一大拠点となる推進力となっています。

 また、海洋で用いられる構造物の主要な形態の一つである水中線状構造について応答解析法の開発に取り組まれ、剛性が低く、外乱に対して大きく変位、変形する構造物に着目し、安全性や機能性を確保するための構造応答の能動制御について、水中超音波技術を利用した計測、スラスターを組み合わせた総合的なシステム開発を行っておられます。

 また先生は海洋工学の分野で学会の国際交流の重要性を早くから強調され、諸外国の学会を纏め、ASMEのInter-national Conference of Offshore Mechanics and ArcticEngineering(OMAE)では、草創期から中心となり、今では海洋工学の世界一の国際会議に育て上げられ、その中心学会として日本造船学会の名を大いに高められました。特に昭和61年には第5回会議を東京で日本造船学会が主催して大成功を収め、それまで米国の国内会議であったOMAEを国際学会に飛躍させることに成功しました。さらに平成7年にも第16回会議を横浜で日本造船学会が主催して大成功を収めました。先生は両会議の組織委員会副委員長または実行委員長として指導されました。平成14年にはASMEへの貢献を称えてFellowに推薦されておられます。

 海洋工学は本質的に学際工学ですが、先生は昭和63年に海洋工学関係他学会に呼びかけ、学会連合体としての海洋工学連絡会(平成11年以降、日本海洋工学会と改称)を立ち上げ、初代の委員長として定例の学際的な講演会である海洋工学パネルを軌道に乗せられました。

 造船業界が現在一致して推進しておりますメガフロート事業では、事業が立ち上がるかなり以前から、企画・立案に参加され、常に産官学協力の中心となり、他分野の権威の方々とも協調・協力して社会基盤の選択肢の一つとしてメガフロートを認知させるべく、安全基準等を取り纏められ、メガフロート事業に多大の貢献をして下さいました。

 さらに平成16年度の本学会の論文審査体制の大改革を論文審査委員長として率先指揮され、環境問題に代表される現在の社会的ニーズに答えるために、日本造船学会論文集の研究対象と論文投稿者の拡大を目指す方向を明確にされ、海洋を知り、守り、利用する新時代の船舶海洋工学に向けた体制を整えられました。

 先生は、ここで申し上げるまでもなく第40代会長として本会の発展に多大の貢献をなさいました。今回のご受賞て本会の発展に多大の貢献をなさいました。今回のご受賞は造船技術賞ですが、先生は個別技術へのご貢献も然ることながら、造船技術の示す国際性と学際性について、われわれ学会員を力強く指導して頂いております。ここに先生のご受賞を報告し、皆様とともに心よりお祝い申し上げたいと思います。

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