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日本船舶海洋工学会誌 KANRIN(咸臨)

特集「カーボンニュートラルに向けた荷役」にあたって

日本船舶海洋工学会 学会誌編集委員会

荷物を乗せて水上を移動する乗り物である船舶では、船上と陸上の間で荷物を移し替える荷役が必要になる。古くから1860年初頭にタンカーが出現するまでは、石油も樽に入れて、穀物、羊毛、雑貨などすべての荷物を一般貨物船や貨客船などの同じ船で運んでいた。タンカーの出現以降、鉱石運搬船、石炭専用船など用途が細分化された専用船が登場するのに合わせて、荷役は人力から専用の荷役機器へと移り変わってきた。現代では機械化、省力化された荷役機器が広く普及し、効率的な荷役が行われている。今後は先進国を初めとする多くの国で、少子高齢化や社会・経済の構造変化で荷役に関わる産業での人手不足の可能性もあり、さらなる効率化が求められている。一方、地球温暖化による気候変動への対策として日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを宣言しており、荷役に関わる産業でも温室効果ガスの排出削減についての取り組みが求められている。さらに新型コロナウイルスの感染拡大、不安定な国際情勢などによる経済活動の停滞・不安定化を背景に海上物流に関心が高まっているこの機会に、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みを軸に、荷役に改めて理解を深めることを目的にこの特集を企画した。

はじめに、我が国の港湾における温暖化対策の取り組みとしてカーボンニュートラルポート(CNP)構想について、日本の港湾環境政策の経緯とその背景から始め、港湾における気候変動対策とその具体的な論点を通して、国土交通省国土技術政策総合研究所の杉村 佳寿氏(執筆当時は九州大学大学院教授)に概説して頂いた。

次に、カーボンニュートラルに向けた荷役に関連する機器の取り組みの例を4件紹介する。

はじめに、コンテナターミナルにおける温室効果ガスの排出削減の取り組みの例として、水素燃料電池を動力とするクレーンによるCO2排出削減対策について、これまでの経緯や水素燃料電池駆動の課題と対応も踏まえながら、(株)三井E&Sの市村 欣也氏と浅見 織音氏に紹介頂いた。

二つ目に、港湾で荷役する船舶の動力からの排出に着眼した対策として、陸上電力供給システムについて、導入の経緯と各国における導入の状況から始め、国際規格と船級規則、さらにはコンテナ船を例に実際のシステムについて方式と機器構成、具体的なシステムの利用手順まで、寺崎電気産業(株)の阪本 達也氏に詳細な紹介を頂いた。

三つ目に、商船で広く使われているデッキクレーンについて、その概要と課題、さらには遠隔監視機能を持つ次世代型のデッキクレーンの開発の経緯と概要を三菱重工機械システム(株)の米山 恒平氏と笹野 泰祐氏に紹介頂いた。

最後に、港湾における荷役労働の軽減を通した温室効果ガスの排出削減への取り組みの例として、木材チップ運搬専用船の自動運転デッキクレーンについて、チップ船の歴史と荷役の概要、チップクレーンの構造と機能から始め、さらにはチップクレーンの自動運転装置の構成や機能について、(株)相浦機械の吉本 貴司氏と木村 司氏に詳細な説明を頂いた。

本特集が、荷役とカーボンニュートラルに向けた様々な対策の現状に関する理解について、読者の皆様の一助になれば幸いである。

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