日本船舶海洋工学会 学会誌編集委員会
地球環境問題の重要性が国際的に認識され、船舶海洋分野においても環境負荷の低減、エネルギー効率の向上が求められている。特に船舶はその長い寿命の中で、実際の航海で遭遇する海象の中で効率良く運航することが求められており、実海域上での性能や信頼性、航行の効率化についての知見を深める必要がある。実海域においては、風や波浪、潮流などの気象条件の影響を受けるため、これらの気象情報の利用が今後ますます重要になってくると考えられるが、近年の計測技術の発達によって、気象情報の詳細な計測・推定・予測がなされており、それらを利用した技術が開発されつつある。
本特集では、気象情報利用の現状について解説するとともに、気象情報の利用の展開事例を紹介する。
まず、船舶海洋分野における気象・海象情報利用の重要性とその現状について、東京海洋大学の庄司るり先生に概説をいただいた。
次に、現状における気象・海象の推算方法や、その精度について、(一財)日本気象協会の松浦邦明様らに、詳しく解説していただいた。
また、船舶運航の実務に対して、気象・海象情報を活用するためのプロセスやその活用例を、(株)MTIの前田佳彦様らにご紹介いただいき、(国研)海上技術研究所の加納敏幸様には、気象・海象情報を取り入れた、内航船に対する環境対応型運行支援システムの概容とその適用事例について、解説していただいた。
さらに、気象・海象情報の実務的な展開として、(国研)水産工学研究所の三好潤様には、ウェザールーティングの漁船へ導入事例について、詳しく説明していただいき、最後に、神戸大学の笹健児先生に、今後もさらに必要となってくる気象・海象の予測精度の高度化に向けて、利用する気象データや数理モデルによる予測の違いや特徴について解説していただいた。
本特集によって読者の方々が、気象・海象情報に興味を示し、船舶海洋分野におけるさらなる利用や発展につながれば幸いである。