日本船舶海洋工学会 学会誌編集委員会
「複合材料」は人類が文明を築き始めた頃から利用されているものであり、比較的なじみのある材料といえる。近代になり、化学樹脂と繊維を組み合わせた複合材料が開発され、軽い・強い・腐らないという特徴から、金属の代替としての利用が進められてきた。しかしながら、成形時間が長いことや、加工の難しさからコスト高となること、長年培われてきた金属材料の設計や製造、整備、リサイクルの能力と比較すると、新しい材料である複合材料が普及していくための障壁があったため、その市場は緩やかに拡大してきた。
ところが最近では、複合材自体が大きく進化することだけでなく、成形技術の進展から、特に航空機や風力発電などで採用拡大が進んでいる。今後は自動車や大型船舶への利用等も含めて、私たちの身の回りの物の素材に、ますます利用されることが期待されており、その市場規模は指数関数的に増加することが予想されている。
本特集では、9月号(前編)と11月号(後編)の2号にわたって、複合材料技術の発展の推移、および様々な分野への利用、さらなる複合材料利用の展開について解説する。
本特集によって読者の方々が、今一度、複合材料について興味・関心を示していただき、今後の複合材料の利用に関して理解を深める一助になれば幸いである。