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日本船舶海洋工学会誌 KANRIN(咸臨)

特集「JASNAOEにおける海洋教育の現状とこれから」にあたって

日本船舶海洋工学会 学会誌編集委員会

我が国は世界有数の排他的経済水域(EEZ)を有しており、しばしば海洋国家と称される。ただし、近年では造船産業や海運業、水産業の発展および人材の育成・確保が大きな課題となっている。その一因として、一般的に海や船に関する知識、関心が必ずしも高くないことが挙げられる。これには様々な理由が考えられる。例えば、我が国は工業化していく過程で住環境と海を含む水辺との間に多くの工場や物流基地等を建設してきた。そのため、それまで身近にあった水辺との間に隔たりが生まれたことは大きな理由の一つとして挙げることができるであろう。また、教育面では、高度経済成長期より第二次産業を中心とした教育が中心となり、水産業や海運業といった第一次・第三次産業に関する教育が見過ごされがちになっていたのではと考えられる。しかしながら、近年では2011年の東日本大震災やそれを契機とした海洋再生可能エネルギー発電の促進、台風被害等によって色々な意味で海洋への注目度が上がりつつある。また、2007年の海洋基本法の制定を経て、教育分野では小・中学校学習指導要領(平成29年告示)および高等学校学習指導要領(平成30年告示)において、相次いで海洋・海事の記述の充実が図られた。新学習指導要領は、2020年度から全国の小学校で全面実施され、中学校で2021年度、高等学校では2022年度から、順次全面実施される予定である。一方、国土交通省では、全国の小・中学校で、海洋・海事について授業に取り入れるための参考となる「海洋教育プログラム」が作成された。初等中等教育におけるこれらの動きが、海洋産業の好転につながる新機軸を打ち出すこととなるか期待が高まるところである。

我が国における海洋教育が再構築されつつある中、本学会も海事・海洋の啓発に関して少なからず貢献していることを読者の皆さんはご存じだろうか。本学会では海洋基本法が制定される以前の2005年7月に海洋教育ストラテジー研究委員会が発足し、翌2008年5月に常設委員会である海洋教育推進委員会が新設されている。KANRINでは2008年11月の第21号で「日本の海洋教育活動」として両委員会の活動について特集を行った。それから現在に至るまで、同委員会は活発に海洋教育啓発活動を続けている。本特集は、これまでの12年の活動の中で、変化していく海洋分野を取り巻く状況や一般の方々の意識の変化に対して海洋教育推進委員会がどのように考え、活動してきたのか、その教育・啓発活動の理念や活動内容、今後の活動のヴィジョンについて読者の皆様に知って頂きたく企画させて頂いた。

本特集では、まず第1章として海洋教育推進委員会の設立の経緯から現在の活動内容について整理して頂いた。そして第2章では多岐にわたる海洋教育啓発活動の事例について五つの節に分けて、それぞれの活動内容およびその成果、その活動理念について紹介頂いた。最後に海洋教育推進委員会の活動の総括および今後の海洋教育活動のヴィジョンについて説明頂いた。

海洋空間は我が国のみならず人類の存続および持続的発展に欠かせない場であり、それを知り、有効に活用してもらうための海洋教育啓発活動は極めて重要な取り組みであるといえる。本特集によって、読者の皆様に本学会における海洋教育啓発活動取り組みや将来のヴィジョンを知ってもらうとともに、海洋教育の今後のあり方を共に考える機会、一助になれば幸いである。

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