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シリーズ:学生突撃レポート

Vol.010 コンテナヤードの荷役計画に関する調査

1. はじめに

日本の国際物流はその多くをコンテナによる輸送に依存し、その規模は年々増加を続けている。中でもコンテナ船と国内の陸上輸送機関との中継点となるコンテナヤードはコンテナ輸送の中核的存在であるが、輸送の効率化とコスト削減を目的としたコンテナ船の巨大化、またハブ港湾計画などによる日本の既存の港湾の再編の検討など、日本のコンテナヤードを取り巻く環境は大きく変化しつつある。取り扱うコンテナの増加、多様化、荷役時間の効率化が求められる中で、コンテナヤードでの荷役作業の更なる効率化は喫緊の課題となっている。

今回は、「学生突撃レポート」と題し、船舶・海上物流に関する研究に従事する修士課程の学生により、コンテナヤードの見学を行った。同時に、コンテナヤードでの荷役計画のオペレーションの様子について荷役計画立案の担当者にインタビューをすることで、荷役計画の現状とその問題点について調査を行った。

写真1 日本郵船東京コンテナ・ターミナル

2. 調査の概要

今回のレポートは、2011年4月に東京大学新領域創成科学研究科修士課程の学生四名により行われた、日本郵船の国内最大のターミナル拠点である日本郵船東京コンテナ・ターミナル(東京港大井埠頭)訪問の結果をまとめたものである。訪問では、実際にヤード内を車で周りながら、コンテナヤード内の各荷役工程を見学した。また、東京コンテナターミナルに寄港する船舶の荷役計画を実際に行う荷役計画の担当者にインタビューを行い、寄港船の荷役計画の立案方針やオペレーションの流れ、オペレーションルームでの作業の様子などについて調査した。

図1 日本郵船東京コンテナ・ターミナル全体図

3. 荷役機械とその働き

3.1 コンテナヤード全体図

図1 に今回見学したコンテナターミナルの全体像を示す。コンテナターミナル内それぞれの施設についてその機能、役割を説明する。

(1)バース(Berth)
バースはコンテナ船が荷役作業を待つ間に停泊するターミナルの所定の港岸のことである。

(2)エプロン(Apron)
エプロンは、バースに面したコンテナターミナル側で、ここに後述するガントリークレーンのレール等を設置し、コンテナ船の陸揚げ作業、船積み作業 が行われる。

写真2 荷役の様子

(3)コンテナヤード(Container yard)
コンテナヤードは、蔵置ヤードとも呼ばれ、船積みコンテナ、陸揚げコンテナを整理して蔵置しておく場所である。コンテナの輸出入の違い、輸送方面の違い、実入り・空コンテナの違いなどを考慮・分別した状態で、コンテナが複数段に積まれて蔵置されている。ガントリークレーンからコンテナヤードまでの輸送はコンテナターミナルが所有する専用のトラックによって行われる。
また、冷蔵が必要なコンテナのために、電源プラグを併設してあるものもあった。

 
写真3 ガントリークレーン

3.2 ガントリークレーン

港湾の岸壁に設置され、コンテナ船のコンテナンの陸揚げや船積みを行うのがこのクレーンである。大規模なコンテナ船には一隻あたり2,3基のガントリークレーンが設置され、荷役作業を行っていた。岸壁の近くに設置されたレールの上を左右に移動しながら、コンテナからの陸揚げを行っていた。1回の動きで運べるコンテナは一つだが、クレーンの動きが非常に高速であるため、5~10秒でコンテナ一つを運ぶことができる。

 
写真4 トランスファークレーン

3.3 トランスファークレーン

蔵置ヤードでのコンテナの積み上げ、積み下ろしのための荷役機械である。大きな「コ」の字型をしており、積み上げたコンテナをまたぐ形で移動している。

蔵置されたコンテナが高く積まれている性質上、下のコンテナを取り出す際に、目的以外のコンテナも動かす必要がある。この作業をリハンドリング作業と呼び、搬出作業の効率低下を招いている。

 
写真5 コンテナ立体格納庫

3.4 コンテナ立体格納庫

上記の問題を解決するために導入された装置がコンテナ立体格納庫である。コンテナを7段まで積み上げることで、より敷地を効率的に利用することを目指したものである。格納庫全体で840TEUの収容が可能で、コンテナの積み下ろしにはスタッカークレーンを利用する。スタッカークレーンは電力をエネルギー源として駆動するため、ディーゼルエンジンで動くトランスファークレーンよりもCO2排出量が削減できる。

4. 荷役計画

4.1 インタビューの概要

写真6 丸山氏と著者ら

今回は、東京コンテナターミナル寄港船の荷役計画プランニングの担当者である、日本郵船東京コンテナ・ターミナルの丸山祐司氏にインタビューを行った。コンテナターミナルビル内にあるオペレーションルームにて、荷役計画作成ソフトを用いたコンピュータによる実際のプランニング作業の様子を見学し、丸山氏ら荷役計画担当者の方と活発な意見交換を行った。

4.2 荷役オペレーションの流れ

東京コンテナターミナルのターミナルプランナーの役割は、ターミナルに寄港する各船が所定の停泊時間内に安全かつ効率的に荷役を終えられるように、コンテナの揚げ積み順やコンテナの積み位置を決定することである。本船の入港から出港まで、本船の船会社や各作業会社と連携しながら調整を行う。

(ⅰ)ベースプラン作成
荷役計画の立案は船会社のセンタープランナー(LPO)及び各積地のターミナルプランナーとの間で行われる。まず、LPO はターミナルプランナーから各地の貨物予約情報(Booking List)を受信し、船内のおおよその積荷配置のベースプラン(Stowage Instruction)を作成し、各ターミナルプランナーに伝達する。Stowage Instructionは、本船がOver stowを起こさずに航海できるか、冷凍コンテナなど特殊貨物が適切に運べるかなどに注意して作成される。

(ⅱ)積み込み位置決めと荷役機械の割り当て
ターミナルプランナーは、Stowage Instructionと、CYカット(貨物予約受付の締切)により確定した輸出情報を元に、荷役作業及び各コンテナの詳細な積み込み位置(stowage plan)を立案する。CYカットは本船の行先などによって異なるが、入港の前日に行われることが多い。荷役作業は基本的に出港の30分~1時間前に余裕をもって終わるように立案される。

停泊時間内に作業を終わらせるためには、ガントリークレーンやトランスファークレーンなどの荷役機械の稼働率を高めることが不可欠である。特にガントリークレーンは、他バースに停泊する船の荷役作業と干渉しないように各クレーンの位置と担当作業を割り当てることが必要となる。各コンテナの積み込み位置は、積み込み後のドラフト、GM、各応力からコンテナ個縛強度や危険物の隔離など諸条件を満たすかシミュレーションを行い決定される。これらの作業は計算機上で行われ、プランナーは巨大なコンテナ船のどの位置に何のコンテナが積まれているか、画面上で視覚的に確認しながら作業を行う。

(ⅲ)プラン最終確認と入港
こうしてターミナルプランナーによって作成されたstowage planはLPOに送信され、出入港、航海の可否のチェック及び修正が行われる。stowage planが承認されると、本船の一等航海士への確認と承諾を経て、荷役作業が開始される。本船入港後は、港側の荷役責任者として、荷役への立ち会いや計画変更への対応を行う。本船出港後まで、担当船に付きっきりでの作業となる。

4.3 現在のコンテナ輸送における問題点と今後のコンテナ輸送に求められる課題

以上の見学の結果を踏まえ、現在のコンテナ輸送に関する問題点を列挙し、設備、システム両面からその解決策を検討した。

(ⅰ)新コンテナターミナルの必要性
近年のコンテナ貨物量の増加傾向に伴い、既存のコンテナターミナルは過密気味になっている。また、航路・港湾の位置により、就航するコンテナ船の船型や取扱貨物量が異なるため、それぞれに対応した適切な規模、機能を持つ新ターミナルが必要となっている。

(ⅱ)トレーラー輸送の問題点
東京港など日本の多くの港湾では、荷揚げされたコンテナの多くがトレーラーによる陸上輸送で国内各地に運ばれている。船舶の大型化及び効率化によりコンテナ取扱量が増加するにつれて、港湾の周辺ではコンテナ運搬用車両により引き起こされる交通渋滞など交通環境の悪化を招き、効率的なコンテナの配送を困難にする要因の一つとなっている。また、コンテナ運搬車両による大気汚染やCO2排出量の増加も深刻化しており、モーダルシフトという視点から、国内でのコンテナ輸送をトレーラーによる輸送から鉄道等環境負荷の小さい輸送手段に変換することも求められている。

これらの問題を解決するために進められているのが、港湾コンテナターミナルの24時間化である。24時間化そのものは90年代から提唱され続けてきたが、国際ハブ港(スーパー中枢港湾)の開発が本格化するにつれて中心的なテーマになってきている。平成21年度、平成22年度に神戸港などでモデル事業が行われ、将来の実現を目指す。

また、モーダルシフトの解決策の一つとして、鉄道乗り入れ型コンテナターミナルが提唱されている。トラックやトレーラー等の自動車によって運送されているコンテナターミナル発の陸上輸送を貨物列車に替えて設計することで、CO2削減を図る。

上記の二つをはじめ、様々な手法が港湾効率化のための解決策として提示されているが、いずれの手法を使うにせよ、施策によって輸送業者は渋滞の削減・CO2の削減によって燃費の向上等の直接的なメリットを得ることができるが、港湾側が直接享受できるメリットが提示されていないのが現状である。

(ⅲ)コンテナヤードの省スペース化
コンテナ船の大型化に伴い、一回の荷役作業で大量のコンテナの積み降ろしが行われるようになっており、ますます広いヤードが必要とされるようになっている。しかし、ヤードの拡張はコストや環境リスクが膨大であり、また広いヤードは水際線から陸地のかなり奥までを専有使用することから都市環境的に好ましくない。この問題を解決するためには、船の荷役及び分配作業の高効率化を実現し、既存のヤードのまま取り扱えるコンテナ数を増やすことが求められている。

こうした問題に対して、現在、コンテナヤードのハード、ソフト両面から解決の取り組みがなされている。ハード面では、東京コンテナターミナルの立体格納庫が好例である。現在この格納庫は主に荷揚げしたコンテナの保管に使用されており、トラックの引き取り待ちとなったコンテナを収納することで、他の荷役作業のためのコンテナ蔵置スペースを空ける効果が期待できる。トラックがヤードに入構出来る昼間はトラックへの受け渡し、夜間はヤードから格納庫への移動が主となっている。また、蔵置ヤードに積むことのできるコンテナの段数は通常4段となっているが、新型のトランスファークレーンを用いている場所では5段積みも可能となっており、コンテナヤード内の蔵置コンテナ数を増加させるという対応も行われている。

ソフト面では、クレーン割りなど荷役機械の効率的な作業配分が必要である。リハンドリング作業や、荷揚げから搬出までのリードタイムの増加はその分だけ蔵置スペースを増加させることにつながるため、それらを排除した効率的な機械割当が求められる。

5. おわりに

今回の訪問を通じて、コンテナ船荷役の核となる荷役計画に触れ、実際のプランニング作業や荷役作業など普段なかなか知ることのできない詳細な部分を見学することが出来た。また、プランニング担当者へのインタビューを通じ、学生ながらに感じたコンテナヤードと荷役作業についての様々な疑問について意義深い議論を交わすことができた。

荷役作業の最大の制約条件は寄港時間であり、余裕をもって積み終わることが絶対条件である。一方で、早く多く積むだけでなく、より作業を平準化して効率的に作業を終わらせることが求められているとの印象を受けた。

荷役計画のプランニング担当者は、担当船入港時などは徹夜になるほどの忙しさという。数多くの荷主からなるコンテナを短い寄港時間内に荷役するという作業は、緻密なプランニングに加え、こうした現場の作業員の方々の情熱によって支えられているということを実感し、またこれは、海上物流に関する研究に従事する著者らにとって大きな刺激となった。今後の研究に対するモチベーションを持続するための大きな要因となったことに対して、本事業に深く感謝したい。

最後に、修士課程の学生にこのような貴重な機会を与えていただいた日本船舶海洋工学会の関係各位に心からの謝意を表すと共に、温かく受け入れていただいた日本郵船東京コンテナ・ターミナルの皆様、同行して頂いた先生方、訪問先の選定及び調整にご協力頂いた皆様に厚く御礼申し上げる。

学生員 木村 彰吾(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

学生員 長谷川 嵩(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

学生員 曹 樺楠(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

学生員 于 佰鑫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

(所属は発行当時)

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