Japanese
メニュー
論文集・学会誌
ホーム > 論文集・学会誌 > シリーズ・読み物 > 学生突撃レポート > Vol.015 株式会社シンコー編

シリーズ:学生突撃レポート

Vol.015 株式会社シンコー編

写真1 株式会社シンコー本社

1.はじめに

広島県をはじめとする瀬戸内沿岸は、古くから造船業で盛んな地域であり、舶用機器を製造するメーカーも数多くあります。今回紹介する株式会社シンコーもその中の一つで広島市に本拠があります。

日本の造船業はこれまで経済状況の変化にさらされながら好調期と不況期を繰り返し経験してきましたが、その中で生き残ってきただけでなく、カーゴオイルポンプ・タービンの世界でシェア世界一を達成したメーカーが地元の広島に存在することを知り、興味を持ちました。

本報告は、株式会社シンコーに訪問させていただき、私なりの視点からその企業力を探ってみた結果を紹介します。

2.株式会社シンコーの概要

株式会社シンコーは広島駅近くに立地しており、最寄りの在来線駅から徒歩5分のところに本社建物と工場群があります。また、近くには広島を代表する企業であるマツダの本社工場もあり、一帯には関連メーカーの工場も多く存在します。一方で、近くにマツダスタジアムが建設されたほか、主力工場脇を在来線が通っており住宅地も近くにあるなど、工場と住宅地が混在した市街地にあります。

当社の創業は古く、1938年(昭和13年)に、新興金属工業所として設立されました。戦時中は合金鋳物工場として呉海軍工廠向けのバルブやポンプ等の鋳物を生産していました。戦後、陸・舶用のポンプ、タービンを製作しており、舶用カーゴオイルポンプ・タービンのシェアは世界一です。

1988年(昭和63年)に新たな時代への飛躍をめざし、社名を株式会社シンコーに改めました。株式会社シンコーはその高い技術力により、製品は全て自社技術によって開発しています。さらに、近年、余剰蒸気を使ったポンプ駆動用蒸気タービンの開発を行うなど、新規技術開発にも熱心です。

3.製造現場

3.1 工場の構成

株式会社シンコーの特徴として、品質向上のために、部品から自社生産していることが挙げられます。

生産工場は大洲工場、府中工場、千代工場の3つの工場があります。府中工場では、主力製品であるポンプの製造、組み立て、検査を行い、大洲工場では、タービンの加工、組み立てが行われています。

3.2 工場見学

(1)鋳造工場

最初に府中工場にある鋳造工場を案内して頂きました。驚いたことに、工場内は換気設備がしっかりと整っており、マスクをしていなくても作業できる環境とのことです。近隣に住宅も多く、防塵・防音・公害対策などを十分に考慮されています。

写真2 鋳造工場

鋳造工程では、ポンプに必要な部品を鋳鉄・青銅・ステンレスなどの材質ごとに分けて溶かし、黒土でできた鋳物の型に流し込み、冷やし、固まると振動を与えながら、型からはずします。この際、型に使用していた黒土は、再利用されるそうです。そして生成された鋳物の粗を落とす研磨作業の順に工程が流れていきます。鋳造品の品質向上とコスト低減のため、自動制御の生産ラインが備わり、多品種の生産に対応しているとのことです(写真2)。

株式会社シンコーでは、鋳造工場で部品を全て自社生産することにより、品質の良い商品を提供することができるとのことです。

(2)ポンプ工場

ここではポンプの組立、組立後の検査を行います。写真3に示すように、人の手で直接的に作業をされていました。組立てられているポンプは何種類もあり、今後も人の手で作業され続けるはずです。

また工場内には、写真4に示すように数多くの品が保管されており、受注があれば、すぐに対応できるようになっていました。

写真3 ポンプの性能検査をしている様子
写真4 ポンプ工場内の部品保管庫
写真3 ポンプの性能検査をしている様子
写真4 ポンプ工場内の部品保管庫
写真5 自家発電装置
写真6 LNG・LPG性能実験棟

(3)自家発電装置

株式会社シンコーでは、自社のタービン、ポンプを試験・性能評価するために2,200kWの自家発電装置を設置しています(写真5)。蒸気を発生させるための燃料には廃屋の木材などが使用されており、発電された電力は工場内で消費されています。

(4)LNG・LPG性能実験棟

写真6に示す工場内には、LNG運搬船に使用されるカーゴポンプなどの性能評価実験を行っています(写真7)。

実験に使用するLNG は中国電力にお借りしているそうです。地元企業との親密な関係があると感じました。

(5)タービン工場

次に府中工場にあるタービン工場を案内していただきました。本工場はタービンケーシング、回転体、減速機の加工、組み立てを行い、NC機械、MC機械などが設備された近代的な工場です。

写真8は、タービンもポンプ工場と同様に組立、組立後の検査を行っている様子です。

写真7 LNGカーゴポンプ
写真8 タービン工場
写真7 LNGカーゴポンプ
写真8 タービン工場

3.3 本社

最後に本社の中を案内していただきました。

本社の中には、ポンプ、タービン設計部、営業部がありました。各部署とてもきれいに整頓されていて、仕事のしやすい環境であると感じました。

4.インタビュー

最後に、タービン設計部部長角本琢哉様、営業一部主任住田弥士様にお話を伺いました。

4.1 企業の方針、製品について

御社製品が高い世界シェアを維持している理由をどのようにお考えですか。
すべての工場が広島に集約しているため、徹底した品質管理ができ、お客様の要求や仕様変更に臨機応変に、また、タイムリーに対応できることです。最後に、これが一番の要因として、アフターセールスサービスです。どこから要望があっても良いように、24時間以内に対応するため、海外にたくさんの拠点を持つことでお客様の信頼を得ていることです。
技術開発や、商品開発で何が一番重要だと考えていますか。
中小企業に限って言えることなのですが、専門知識、新たに学べる力量、アプローチする力、この3つの力を兼ね備えた人を中心に開発を行うことです。ただし、一番重要なことは、全社一丸となって、バックアップできる職場環境が一番開発には重要です。
営業の意見としては、ポンプやタービンを軸として、いろいろなシステムを付け加えパッケージにすることで付加価値をつけることが客先のニーズに応えることです。
ポンプやタービンなどを通じて社会や地域にどのような貢献をしたいと考えますか。
経営者の方針として、基本的にお客様に満足してもらうため、商品を納め、客先の感謝と一緒に代金を収めるのをモットーとしています。そのため、全てサービスから入ります。
地域の貢献として、府中町や太田川の清掃活動、また創業者の考えとして、人を育てるために広島青少年文化センターをつくり、文化センターを通して地域交流、日韓交流を行っています。

4.2 学生へのアドバイスなど

欲しい人材はどのような人物ですか。
欲しい人材がいても、その人が来てくれるかわからないので、教育に力を入れています。一人ひとりどのような教育がいいか考えています。
学生へのアドバイスを教えてください。
好奇心旺盛で努力を怠らないことです。

5.おわりに

株式会社シンコーを見学して感じたことを述べますと、一貫生産を行うことによりお客様のことを、第一に考えていて、利益を優先するのではなく、サービスを重視し、信頼を得ることを最優先している企業であると感じました。

製造業とは、時代の先端技術を大幅に取り入れることにより、最高の効率を生かせるような技術力の集大成でもあることがわかりました。この見学を通してモノを造るということの難しさと技術者たちの熱意を痛感しました。

我々若い世代に最も必要なことは、物(事)に対する強い思いと夢がその時代を切り開き未来へと導くということ、各人の専門分野を超えて一つの目的へ向かい理想や夢を現実へと誘うことが重要であると再認識しました。

謝辞

このたびの見学では総務本部長林浩二様をはじめ、タービン設計部部長角本琢哉様、営業一部主任住田弥士様ならびに株式会社シンコーの方々に大変お世話になりました。深く御礼申し上げます。また、このような機会を与えてくださった日本船舶海洋工学会ならびに編集委員各位に深く御礼申し上げます。

竹田(たけだ) 典史(のりふみ)
広島大学大学院工学研究科
輸送・環境システム専攻

  • Photo Gallery
  • Ship of the Year
  • デジタル造船資料館
  • アフターコロナ禍特別検討委員会報告会

近日中のイベントはありません

広告 [広告掲載のご案内はこちら]

会員ログイン
新着情報一覧はこちら
学会へのアクセスはこちら
ページの先頭へ戻る

〒105-0012
東京都港区芝大門2-12-9
  浜松町矢崎ホワイトビル 3階 [交通アクセス]

TEL:03-3438-2014 / 2015
   FAX:03-3438-2016
   [事務局へメールする]
ページの先頭へ戻る