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シリーズ:学生突撃レポート

Vol.018 有限会社 江藤造船所

1.はじめに

近年、小型船の高速化の技術が進歩し、40ノット以上の船速の小型船も見られるようになった。その中で、アルミ船を主力製品とした最先端の技術で業界をリードするのが今回紹介する江藤造船所である。また、純チタン船を建造した世界で唯一の造船所でもあり、非常に注目されている。

今回、「学生突撃レポート」という機会をいただいたので江藤造船所の従業員の方々へインタビューを行い、造船所内の見学をさせていただいた。本記事では、そのインタビューの成果を報告させていただきたい。

2.会社概要

図1 (有)江藤造船所

佐賀県唐津市のJR筑肥線西唐津駅から海の方に10分ほど歩いたところに江藤造船所はある(図1)。この江藤造船所は昭和13年に創業し、それ以来、その時代に適応した船殻材料を利用した小型船を建造し、顧客のニーズに応えてきた。主力製品として造っているのが、アルミ合金を利用した小型高速旅客船、小型高速レジャー船、そして小型底引網漁船である。

もともとは木船を造っていたが、1970年から木船より軽くて性能の良いFRP(繊維強化プラスチック)船の建造を開始した。しかし、FRP船は廃棄できないという欠点があり、廃船の処分が問題化したため、いち早くアルミ合金船の建造に取り掛かった。アルミは廃棄ができ、FRPより軽いということで、建造する船はFRP船からアルミ合金船に移行していった。ちなみに現在、世に出回っている小型船はほとんどがFRP船だそうだ。しかし、アルミ合金船は、錆びるため塗料を塗らなければならず、その塗料が海洋汚染につながるという欠点も持ち合わせていた。

そんな中で社長が目を付けたのがチタンであった。チタンは錆びないため、塗料を塗らなくてもよくて、アルミよりも強いので、船の板厚を薄くすることができ、さらに高速で燃費の良い船を造ることができる。材料の強度を密度で割った比強度という単位があるが、強度を降伏応力で定義した場合、小型船に一般的に使われているアルミ合金とチタンを比較すると、チタンのほうが5倍以上の比強度を持っている。つまり、チタンとアルミで降伏応力を同じにする場合、重さが船の板厚に比例すると考えるとチタンはアルミの5分の1以下の重さでよいということである。

図2 第二朝日丸(国内初の全純チタン漁船)

しかも錆びないということは半永久的に使えるということであり、今現在2隻のチタン船が使われているが、1つはもう20年から30年もの間使われているそうだ。一般に、FRP船は10年、アルミ合金船は20年というのが漁船の寿命らしいのだが、それを考えるとチタン船が優れていることがわかる。図2は、国内初の純チタン船である。また、純チタン船を建造しているのは世界でも江藤造船所だけなので、アメリカ海軍が興味を持って、訪ねてきたこともあるという。

ただ、欠点はコストである。チタン船に興味を持つ船主さんはたくさんいるが、値段を聞くとお断りされてしまうそうだ。今後、さらなる実用化に向けて部分的にアルミ合金を利用するなどの工夫をしてコスト削減を図る計画だと言われた。

3.小型船の建造

図3 建造中の船

このような小型船の建造は、船主さんからの要望を聞いてから寸法やエンジンの仕様を決め、そこから船の細かい形状や配置などについて、強度計算以外は、大きい造船所が部門ごとに役割分担しているところをここでは従業員全体で最初から最後までまとめて行っている。強度計算は専門の会社に任せているらしいが、より性能が良く、安い船を造るためには、何度も設計しては、強度が足りずに突き返されては設計し直すの繰り返しらしい。やはりそこに設計に対する強いこだわりが見える。

1隻あたり建造にかかる期間は、排水量15トン未満で約6か月、19トン未満で約8か月、35トン未満で約10か月である。また、排水量が20トン未満の船は、検査を国(JG)ではなく日本小型船舶検査機構(JCI)が行う。よって、できるだけ排水量を増やしつつも20トンを超えないように努力しているという。図3は、建造中の船の様子である。

4.江藤造船ならではのこだわり

図4 溶接の様子(中央で屈んで部材の溶接をしている)

船を造るにあたり、特にこだわっているのがお客さんに喜んでもらうことだそうだ。船主さんももちろんだが、特にお客さんが喜んでくれた時が一番うれしいそうである。

アルミやチタンは熱に弱く、ひずみがよく出ることから、溶接に向いていないとされているが、江藤造船ではひずみが出ないように独自の工夫をしているそうだ。図4は、溶接施工の様子である。

ちなみに、アルミ合金の材質は、5083-Oという、やわらかくて波の衝撃を逃がしやすい性質を持つものを使用し、この加工に特化した技術を持っている。図5は、熱処理をしてひずみを取った後の様子である。船の価格が高くても、性能がよく、かつ見た目もきれいな船を造ることを目標としているそうだ。特に仕上げには気を遣っていて、溶接ひずみは、後でしっかり熱処理をして残留応力を減らし、表面も凸凹にならないようにしている。

図5 熱処理をしてきれいになった外板

また前述したように、6人という少ない人数で1から10まで行っているため、会社の雰囲気は昔ながらの船大工の集まりといった感じであり、みんなやりがい重視でやっている。一応それぞれに得意分野はあるらしいが、役割分担は特になく、みんな何でもできるそうだ。また、みんながやらされているという感じではなく、能動的に仕事をしているため、一人一人が造る船に誇りを持っている。

今後のことをお伺いしたところ、お金を稼いで従業員たちに贅沢させてあげたい、という現実的な話も聞かせていただいた反面、優れたアルミ加工技術を生かして、より良い船を造っていきたいとのことであった。

5.おわりに

今回のインタビューで、船は大勢で役割分担して造るものだという自分の中の固定概念が覆された。少人数だからこそ、一つ一つの船に対して熱い情熱をささげて造っていると感じた。また、取材を行ったときは、真夏の蒸し暑い日だったが、そのような環境下でも、一つ一つの作業を丁寧に行っていたことに、強く心をうたれた。このような江藤造船所の船造りに対する情熱は、これから社会人になる著者にとって大きな刺激になった。

謝辞

最後に、今回の取材でお忙しい中、著者のインタビュー及び工場見学に快く応じてくださった江藤正樹様に厚く御礼申し上げます。朝早くから長時間の取材にお時間をいただき本当にありがとうございました。また、このような貴重な機会を設けてくださった日本船舶海洋工学会並びに学会誌編集委員各位に深く御礼申し上げます。

上野(うえの) 光希(こうき)
九州大学大学院工学府
海洋システム工学専攻

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