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シリーズ:学生突撃レポート

Vol.011 ナカシマプロペラ株式会社/ナカシマメディカル株式会社

1. はじめに

この度、岡山県岡山市東区上道に本社を構えているナカシマプロペラ様に取材をさせて頂いた。この本社工場では直径6mのものまでを製造し、それ以上の大形の固定ピッチプロペラは倉敷市の玉島工場で製造している。晴れの国岡山ということもあり取材当日は快晴であった。上道駅から本社前まで真っ直ぐ走っている国道250号線を5分ほど歩いたところにナカシマメディカルとナカシマプロペラ本社は位置する。

本記事では、世界トップシェアを誇るナカシマプロペラと、プロペラ事業から派生したナカシマメディカルに関して紹介させて頂く。

写真1 ナカシマプロペラ本社社屋

2. 会社概要

ナカシマプロペラは、世界最大手の舶用機器メーカーである。特にプロペラのシェアは国内約70%海外約30%であり、最も小形で18cmのものから、最大で12mおおよそ150tのプロペラを作る技術を有している。小形から大形まで1社で作っているのは、世界でもナカシマプロペラだけである。1926年の創業当時から小形のものを除き、ほとんどを一品受注生産で製造し、世界で唯一つの最適なプロペラを作り続けてきた。

ナカシマプロペラは、世界最大手の舶用機器メー最適へのこだわりは、ナカシマ最大の特徴である技術にも表れている。それは、職人による最終研磨の手仕上げだ。通常の研磨機を使用すると、1/10mm台の誤差まで磨くことができるのだが、さらに職人の手により1/100mm台の誤差まで、より設計図面に近く仕上げることができる。設計との誤差は振動や騒音に繋がり、また効率悪化を招く可 能性もある。誤差を小さくすることで、これらの危険を予防し、最適を追及することができる。プロペラの効率が1%向上することにより大型船舶では年間数千万円の燃料費が抑えられ、CO2も数千万トン削減される。このようにプロペラに対して最適を追及するこだわりが顧客の喜びや満足に繋がり、現在の地位を築いてきたのだろう。

写真2 直径8.5mコンテナ船用プロペラ

さらにナカシマプロペラは舶用機器メーカーでありながら「ユニークなもの」を作っている。それは人工関節だ。元々はより推進性能の高いプロペラの為に培われてきた仕上げの研磨技術が、人工関節の滑らかな曲面加工へと分野をまたぎ、活かされ、メディカル事業へと応用されたのだ。

ナカシマプロペラは上述のメディカル事業だけでなく、設計から派生したCAD/CAMシステムの開発・販売を行うシステムズナカシマや、最適創造をコンセプトにデザインされたエクステリア商品の販売を行うIOS DESIGNなど、プロペラ事業以外にも意欲的に挑戦している。話によると、勿論うまくいかなかった事業もたくさんあったが、社員が提案した企画をどんどん挑戦させてくれる社風であり、この夏には入社1年目の二人がこれまで製作したことのない扇風機の羽根の設計に取り組み試作を重ね、従来のものより消費電力を1/10に抑えながらも10m先まで風を騒音なしで送ることができる「カモメファン」という扇風機の羽根を作った。メーカーによって2万台製造予定で商品化されたが、予約の段階で超過し、3万台売れることとなった。

写真3 ナカシマプロペラのカモメファンなど

このように他事業にも事業展開するのは、一昔前の造船不況において舶用一筋で苦労した経験があるため、事業の裾野を広げていく必要性を実感したことも起因しているかもしれないとのことである。

3. 工場見学

実際にプロペラを作っている工場内を見学させて頂いた。残念ながら撮影禁止の為、写真でお伝えすることはできないが、簡単に説明させて頂く。

工場に入って最初に目に入ったのはプロペラの型を製作する工程だ。それは大きな砂場を連想させ、鋳物の型というのは木型や金型を使用すると思っていた著者にとっては意外だった。これは前述の通り、量産ではなく、また小形のものから大形のものまで様々なサイズや最適な翼形状のものを作るため、再生利用可能な砂を使用しているとのことだ。こうしてできた型に銅合金を流し込み、大まかな形ができ上がり、ここから研磨に入る。

研磨の作業には大きく2段階あり、初めに研磨機を用いて翼ごとに1本1本ラインを引くように磨いていく。ナカシマプロペラの翼の紋様はこの段階で付いたものである。第一段階で加工された後のプロペラに触ってみた。研磨機の跡は付いているものの既に綺麗な光沢がある。お話によると、職人の方は軍手2枚の上から触っても1/100mm台の誤差まで分かるそうだが、とても信じられなかった。そして第2段階は手仕上げである。一見淡々と作業をしているように見えたが、長年繰り返し経験を積んで得た技がここで使われているのである。

こうして最先端のCAD技術をもって設計されたプロペラが職人達の手で作られ、世界唯一の最適なプロペラとなり出荷されていくのである。

4. インタビュー

インタビューでは総務部の米原様とCFRPを用いたプロペラの開発を手掛けておられる山磨様にお話を伺った。前半でメディカル事業について、また後半でプロペラ事業についてお伝えする。

【メディカル事業】

Q1.メディカル部門は、元々は舶用プロペラの世界トップメーカーであるナカシマプロペラの一事業部であったとお聞きしています。プロペラメーカーから人工関節を開発し、現在に至ったヒストリーを教えてください。また、どのような技術が使われていますか。

A1.きっかけは偶然でした。約20年前にある医師が異業種交流会でプロペラ工場を見学され、「プロペラ製造の曲面加工技術が人工関節の曲面加工に応用できるのでは」とおっしゃったのが始まりです。プロペラを加工する上で培われてきた研磨の職人技とCADを用いた曲面の設計技術を応用しています。過去にチタンを用いた製品の研究をしたことがありましたが、チタンは、強度はピカイチですが、コストが高く、チタン製プロペラを商品化することは断念していました。しかし、人工関節の素材としては軽くて硬く、腐食せず、人体に良く合うという点で最適であるので、過去の開発によるチタンの知識を活かし、チタンを採用しました。人工関節も、設計する・加工する・磨くという工程はプロペラと同じ、また見えないところで24時間動き、かつトラブルがあってはならないという点は共通しています。

Q2.医療業界への進出に当たり、ノウハウや人材等、解決すべき様々な問題があったと思いますが、どのような問題がありましたか? またどのように乗り越えましたか?

写真4 製作している人工関節の一部

A2.人工関節の置換手術は欧米で盛んです。しかし、日本人は欧米人と生活習慣も体格も異なります。例えば欧米人は椅子に座るのに対して日本人は正座もします。そのためより深く曲がる作りにする必要があります。このように日本人、アジア系の人々の生活に合う人工関節作りをしました。また、形状や設計だけでなく、舶用とは異分野の医療というものの価値観の差にも苦労をしました。工業製品というのはでき上がった瞬間が一番良い状態であり、生まれた瞬間から経年劣化が生じます。しかし医療に関しては、それから先何十年と最高の状態を続けなければならず、壊れたではすまない。また、人体に埋め込むものなので容易に実験ということができない。医者と互いにそのギャップを理解し合えた時、また、共同研究によりアジア人に合う設計ができたときに、諸問題を乗り越えられたのではないかと思います。

Q3.メディカル部門の今後の展望を教えてください。

A3.メディカル事業においても、一品受注生産によりお客様一人一人に最適な製品をご提供することが目標です。現在は薬事法により、新製品は一つ一つ国の認可を受けなければならず実現できてはいませんが、もし薬事法が改正されるとそれが可能になります。

写真5 人工股関節

例えば人工股関節一つとっても数種類の表面加工の方法があります。表面を滑らかに加工した人工関節は医療用セメントで接着し、メッシュ加工した人工関節は骨の成長で自然と接着されるようになっています。例えばお年寄りの方は接着に時間を要すると、その間寝たきりになり筋肉が弱り、人工関節が着いても歩けなくなったり、認知症を引き起こすこともあります。そのため、接着の早い方法が選択されることが多いのです。表面加工の方法一つとっても最適なものがあるように、形状やサイズ等お客様に合った製品をご提供したいです。

【プロペラ】

Q1.ナカシマプロペラはどんな社風ですか。

A1.オーナー企業のため、社長との距離がすごく近いです。役員と同じフロアで仕事していることもあり、やりたいことも言いやすく、企画の提案が通るまでのスピードが速いので、通れば実行に移すまでが速いです。

Q2.注目している新技術は何ですか。

A2.CFRP(carbon-fiber-reinforced-plastic)を使用したプロペラです。5 年前から研究・開発を行っています。開発にあたり、私自身、社会人ドクターとして複合材料製プロペラの研究を通し素材から実船実証試験まで行い、 必要な知識をつけました。CFRPを用いると、従来の銅合金と比べ疲労強度は4~5倍強くなり質量は1/5になります。また、炭素繊維の配向の仕方によって異方性を持たせ、剛性のコントロールを行うこともできます。きっかけは潮流発電のタービンにおいて銅合金では重く、軽量化の課題が生じたことでした。プロペラにおいて軽量化することで燃費の向上だけでなく軸径も細くできます。現在使用している銅は価格変動も激しく、会社として調達ルートの確保が必要となっていますが、今後銅価格が高騰すればCFPRへの移行が進んでいく可能性があります。また私自身がCFPRについて学んでいくことで他分野、他事業に応用する足掛かりにしたいです。

Q3.山磨さんの夢は何ですか。

A3.10年以内にCFPRを実用化、事業化させたいです。開発できても実際に船後に付けて走らせ、様子を見なければなりません。私がやりたかったこの事業を社長にさせて頂いているので、これで実績を残さなければ私が会社にいる意味がなくなりクビになりますしね(笑)そういった意味では毎日苦労の連続ではありますが、日々良いプレッシャーの中で働いています。

写真6 左から米原様、筆者、山磨様

5. おわりに

今回の取材を通して、プロペラを製造販売している会社というそのままのイメージではなく、世界トップシェアになってもプロペラ事業と他事業の両面に関して挑戦を続ける社風そのものを感じることができた。現在他事業も積極的に展開しているのは、現名誉会長である中島保様が、創業者のご両親と共に苦労と挑戦を重ね今のナカシマプロペラがあり、これから先も社会の役に立ち、また会社と従業員を導く責任をしっかりと背負っているからだろう。その挑戦の最前線として山磨様のお話を伺ったが、山磨様からも日々の苦労を乗り越え新技術に挑戦する姿を見せて頂いた。私自身、社会人として会社や社会を担う一員となったときには、ナカシマから感じた挑戦し続ける心を持って日々精進していきたい。

謝辞

本記事の取材にあたり、お忙しい中インタビュー及び工場見学に快く応じて頂きました米原様と山磨様に深く御礼申し上げます。長時間の取材にお時間を頂き本当にありがとうございました。また、取材の機会を与えて下さった日本船舶海洋工学会並びに編集委員各位に深く御礼申し上げます。

濱田 貴行(はまだ たかゆき)
大阪大学工学研究科地球総合工学専攻
船舶海洋工学科目修士2年(取材当時)

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