三井造船株式会社千葉工場のかっこいいオヤジ、品質保証部機関グループの鈴木 通友(すずき みちとも)さんを紹介します。
三井造船千葉の品質保証部は製造部から組織的に独立しており、部長の管理の下で品質保証計画を確立・遂行し、その有効性を確認する権限と責任を持っています。
この内、鈴木さんが所属する機関グループは艤装グループに属しており、機関艤装に関する品質保証を受け持っております。業務は軸心見通しから完工までが対象で、具体的な作業は以下のとおりです。
この他にも、購入品の完成状態を確認する"外注検査"や引渡し後の船のトラブル・クレームに対応する"訪船調査"、"保証工事"も有り業務や関係先は多岐にわたります。
昭和48年、鈴木さんは三井造船に入社されました。当時は造船が景気良くどこでもよかったそうです。わたしは就職氷河期に就職活動をしましたが、やはり造船に携われるならどこでもと考えていたことを思い出しました。
経験が長い分苦労も相当されている筈ですが、「仕事に苦労はつきもの。」と一笑に付されていました。トラブルは日々何らかのカタチで発生しており、経験を長く積んでいる分より厳しい苦労を経験されている筈。仕事を簡単に放棄せず、仕事に苦労はつきものと覚悟してその仕事を遣り抜けた人がその道で一目置かれるようになるのかなと思わされる一言でした。
長いご経験の中で学んだことは一言で「ミスをすれば他人に迷惑がかかる」ということ。特に印象に残っている人についても「思い出せない。仕事でかかわった人すべてかも。みんなの助けをかりて今がある。」と仰っておりました。大きな組織の中で、多くの人達そして多くの社内外の関係先の人達と長い時間を掛けて1 隻の船を造り上げる造船ならではの一言と思いました。
そんな鈴木さんの記憶に深く残っている出来事は「シンガポ-ル沖で保証技師としての乗船業務を終了し、下船して通船に乗っている時にエンジンが起動できないと呼び戻されたこと。」だそうです。保証技師としての乗船業務および重責から解放され、余韻に浸っている時に呼び戻される。品質保証部ならではの経験です。
「引渡し後、訪船した時にいい船だよといわれること。」。各方面のエンジニアの方が書かれる後日談にも良く出てくる言葉ですが、一生懸命仕事をしたからこそ感じる一言だと思いました。
働く時にはいつも「完璧な仕事を心がけている。」と言う鈴木さん。しかし、「できなくてまだ悩んでいる。」とのこと。どんなに注意を払っても、どんなに検討してもトラブルは起きる。楽をした結果トラブルを起こしてしまっている自身の仕事を反省する一言でした。
では困った時にはどうするか。鈴木さんは「トラブル発生時の状況把握と早急な対策立案(みんなに知恵をだしてもらう)」が重要だと言います。しかし、トラブルを未然に回避することを最も大切にされており、「アラ-ムがでてからでは遅い。何か兆しがあるはずだから現場を見て歩く。」と言います。先日一緒にトラブル対応をした時には「兆しのようなものがみえたとき、どの時点で工事を中止するか。決断の時期が重要だ。」とも仰っていました。だからこそ、現場には「必要な図面を全て持参して確認している。」そうです。シリーズ船だからと言って手を抜かない。そういう責任感の強さと姿勢が信頼を生むのだと感じました。
船主とかかわることが多い品質保証部。船主からの信頼を勝ち取るために「船主の前での失敗は許されない。事前確認を徹底する。」と言います。そして、「船主が納得する説明を行う。」ことを心掛けているとのこと。常に相手の目線に立ち、先回りして業務を進めることの大切さを感じる一言でした。
週末は競馬を楽しむ鈴木さん。後輩からの印象は「責任感の強い人」、そして「トラブルの時にとにかく現場・現物を調査する人。この姿勢は特に若手は見習うべき。」とのことでした。そして、「本当に面倒見がよく、特に若手・独身者に対してはご飯や飲みに行くことが多い」そうです。確かに海上運転でご一緒した時、現場の若者達と楽しそうに会話をしている姿が印象的でした。
「世界が相手の物づくり。結構楽しい仕事。」 興味を持たれた方、是非造船の世界に足を踏み入れてください。
突然、前触れ無しに本誌記事のモデルをお願いしたにもかかわらず快諾してくださった鈴木さん。本当に有難うございました。また、一向に進まない原稿を辛抱強く待ってくださった関係者の方に謝罪とお礼を申し上げます。大変お世話になりました。
若手が対象の記事ですから、知識よりは仕事に対する姿勢や考え方に焦点を当てるべきと考えて執筆しました。頼れるオヤジの後ろ姿を見て、自分の仕事を振り返る機会になればと思います。
前田 和雄(まえだかずお)
三井造船(株) 船舶設計部 機装設計課
主任 軸系
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