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研究委員会

洋上風力発電設備の構造健全性担保のための海水中疲労強度評価および防食技術の動向

分野:構造・強度、材料・溶接

1. 何をどこまで明らかにしようとするのか(目的と到達目標)

近い将来に我が国近海に設置が期待される浮体式洋上風力発電装置では高圧ケーブルに接続された状態で運用されること等から、運用開始後は設置海域から移動させることが困難であり、船舶のように渠中での定期的な塗装のメンテナンスができない。また、沖合に設置されることから天候や海象条件の影響でアクセス性が制限されるため、洋上風力発電装置では長期的な耐食性の維持管理に課題がある。

上記課題に対しては、例えば電気防食を導入し、耐食性の長期安定化を図ると共に、ウィンドファームに設置される全風車の代表機の電気防食の電流値を遠隔監視することでウィンドファーム全体の状況を把握することにより維持管理の効率化が図れるため、有効な対策になると期待される。

他方浮体式洋上風力発電装置では、風車の大型化に伴いタワー構造や浮体構造の太径化、使用鋼材の厚肉化が進み、構造重量が増大傾向にある。構造重量が増加した場合、各段階でのコストが増加することでウィンドファーム全体の採算性の悪化につながることから、例えば陸上風車で20年程度である運用期間を30年程度に延長するという処置が求められる一方で、浮体風車構造の軽量化のニーズが高まっている。浮体風車構造の軽量化については各構造に高強度鋼を採用することが対策として有効であると考えられるが、浮体風車構造の設計に適用される疲労強度線図では構造材料の強度が考慮されていないことから、浮体風車構造材料を高強度化しても軟鋼と疲労強度線図が変化しないため、浮体風車構造材料を高強度化することによる効果は限定的である。このため、高強度鋼の実態疲労強度を把握すると共に、ショットピーニング等で強度鋼の溶接部の疲労強度を改善できれば浮体風車構造の構造重量の軽量化が図れ、上記課題に対する対策として有効であると考えられる。

上記の背景から、浮体式洋上風車構を構成する鋼材の海水中疲労強度を系統的に調査する必要があるが、これらに対する知見は十分とは言い難い。

そこで本研究委員会では、(1)洋上風力発電設備を中心に近年の海洋構造物で使用されている材料の現状、(2)高強度鋼を中心とする大型浮体構造物への適用が期待される材料における海水中疲労強度に関する研究動向、(3)海水中で供用される構造物に対する電気防食の適用事例や効果に関する研究動向、に関する動向を調査し、海事クラスターとして取り組むべき当該分野での課題抽出を行う。

2. 研究の特色、独創的な点及び意義

洋上風力発電設備の大規模化、大型化は今後不可欠であるが、長期間安定して稼働させることを優先する観点から、疲労や腐食に対しては定量的な知見を十分に考慮せず、過度に安全側に設定されている可能性は否めない。また、疲労や腐食という長期間に渡る検証が必要な問題について個社でデータの蓄積などを行うことは、費用や労力の面で大変な負担である。

出遅れが否めない洋上風力発電技術に関して我が国が世界をリードする立場に立つためには、基礎的かつ共有できるデータや情報の整理や課題設定は中立的な立場で活動する学会の研究委員会が主導するべきであるという考えのもと、本学会材料溶接研究会の幹事メンバーを中心とする産学官の幅広い立場の専門家が結集し、洋上風力発電における材料溶接分野の現状調査とこれに基づく課題抽出を行うことは、本学会が果たすべき役割であり、意義の大きい取り組みであると考える。

3. 国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

海水中疲労強度,防食技術に関しては現在もある程度の研究成果が報告されているが、洋上風力発電設備の構造強度健全性の担保を念頭に置いているかについて、はっきりとしない状況である。本研究では、疲労、防食に関する最近の研究状況を単にレビューするのではなく、浮体式洋上風力発電設備設計や保守への適用を念頭にレビューを行い、今後、特に日本近海に設置される洋上風力発電設備の疲労や腐食の観点からの構造強度健全性を担保するために取り組むべき課題を明確化する点が、海外の研究動向と異なると考えている。

基本情報

委員会長(所属)
後藤 浩二(九州大学)
委員会委員数
13名
キーワード
海水中疲労、腐食、防食、洋上風力発電設備
活動期間
R5.8~R7.7

参加資格、参加方法

研究委員会への参加をご希望される方は、下記連絡先よりご連絡ください。

[洋上風力発電設備の構造健全性担保のための海水中疲労強度評価および防食技術の動向にメールする]

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