海洋構造物の設計および維持管理において,海洋生物の付着影響を考慮することは必要不可欠である。海洋生物が構造物に付着すると、その構造物の重量、外形や表面粗度が変化し、その影響で流体力特性や動的応答、または腐食速度などが変化し、結果として構造物の機能低下や損傷につながる恐れがある。
近年、洋上風力発電をはじめとする海洋再生可能エネルギー関連プロジェクトの増加により、海洋生物に関する知見のニーズが高まっている。特に、これら構造物には必須となる設備である、送電ケーブルや係留索は海洋生物の影響を比較的大きく受けることが知られている。一方で、海洋生物の付着量の推定手法や、運用後の具体的な管理手法に関する研究や技術開発は少なく、関連する知見は限定的である。
本検討委員会では、下記のテーマについて、ニーズ・シーズの調査などを通じ、船舶海洋工学分野から貢献するための具体的な方策を提案することを目的とする。
不確実性が高い海洋生物を対象とする点が特色であり、海洋工学分野のみならず、海洋環境分野および海洋工学分野など、本学会における分野横断的な知見を必要とする研究である。さらには、物理的、生物的、化学的な海洋環境影響を、総合的に考慮する必要がある点が特色である。
また、付着量の推定のみならず、管理手法についても併せて検討することで、構造物の機能低減、損傷リスクに対する総合的なアプローチとなることを目指す。
本研究委員会は、海洋生物付着に関連する研究として、今まで本格的な取り組みがなされていない領域を対象としている。
関連する研究として、海洋生物付着防止に関する研究については、一般商船の防汚塗料の開発や、港湾構造物における防汚技術の開発の中で多くの知見が蓄積されている、さらに理学・生物学的分野においても、生物の付着過程に関する知見は見られている。また、付着した海洋生物が構造物の挙動や信頼性に与える影響については、国が主導する実証研究などを通じて知見が蓄積されつつある。
海外でも我が国と同様、海洋再生可能エネルギーに関する海洋生物関連の研究が多く実施されているが、海洋生物に関する知見は生物相など地域性が強く、海外の知見をそのまま我が国に流用することは難しい。また、海洋生物の管理に関するインフラやガイドラインもオイルガスプロジェクトが盛んな諸外国と比較し、我が国は十分とは言えないのが現状である。
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