IMOでは,国際海運からの温室効果ガス排出削減のため,船舶の推進エネルギー効率を上げるEEDI規制を開始し,今後段階的にその要求レベルを最終的に現行の30%のCO2排出削減量まで引き上げる予定である。ところが推進エネルギー効率を上げると主機関出力が小さくなり,その結果として荒天航行時の安全性が確保できない懸念がある。そのため,最低出力を規制する暫定ガイドラインが既に設定され,今後さらに最終案に向けて議論が深められて行く見通しである。本委員会では,この最低出力ガイドラインの最終版の審議に向けて,我が国の運動性能研究の蓄積を整理し,これから実施すべき研究開発の具体的な方向性を策定・提案することを目標とする。
地球温暖化防止のため船舶からのCO2排出削減は急務であるが,この最低出力ガイドラインがその削減量の上限を事実上規定することになり,船舶設計への影響が極めて大である。特に,2万DWT以下の小型船では海象の影響に対して余裕がないため,EEDI規制との両立が困難となる。これを合理的に解決する方策を提言することは学会の責務といえる。
欧州ではEUプロジェクトとしてこの最低出力ガイドライン検討の研究を行っている。国内では造工でクローズな検討が行われていたが,この10月の推進・運動性能合同研究会において,学会への協力要請が国交省,造工等よりあった。この提案はそれに学会として応えようとするものである。