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研究委員会

海洋再生可能エネルギー水槽実験方法検討会

分野:海洋工学・海洋環境

1.何をどこまで明らかにしようとするのか(目的と到達目標)

 海洋には持続的生産可能な未利用資源が多く、その利用により人類の発展に多大な恩恵がもたらされることが期待されている。海洋再生可能エネルギーについては、コンセプト段階から実証段階まで様々な段階のプロジェクトが進行しているが、商用機として運用例は実質的に無い。また、水槽実験という視点では再生可能エネルギー関連装置は、従来の海洋構造物と違い、発電量が重要な評価基準である。そのために水槽実験では、パワーテイクオフ装置の模型化が重要である。

 現在、ITTCなども含め、海洋再生可能エネルギー(洋上風力発電、波力発電、潮流・海流発電)に関する水槽実験についてのガイドラインなどが最近新たに示され、そこでも機器の大型化による縮尺模型の問題、水槽の機能スペックなどが色々な面で制約となりうることが指摘されているが、必ずしもその課題への対策が具体的には明示されていない。IEC基準においても、発電量評価できる合理的な実験をすべきであることは記されているが、その具体的な手順については未整備な部分が多い。

 今後の商用化を水槽実験結果が合理的な後押しをするためにも、研究委員会では洋上風力発電、波力発電、潮流・海流発電に関する水槽実験に関して、特に模型の縮尺問題、発電機構を含む可動2部の模型化、水槽実験での環境再現性能とその精度等に対する課題点を整理・検討を行い、合理的な水槽実験手法および今後必要とされる水槽実験の機能・性能の提案を行う。

 また、実験の整理を通した研究委員会としての活動が、次世代の海洋構造物に関する水槽実験に要求される試験水槽のスペックの提示、今後の個別の具体的なプロジェクトのシーズ発掘、ITTCのガイドラインやIEC基準作成プロセスへのフィードバック、につながることから、ストラテジー研究委員会としての申請とした。

2.研究の特色、独創的な点及び意義

 海洋再生可能エネルギーの進展には水槽実験の果たす役割は大きく、また期待されていることは多い。国内の試験水槽を用いた関連の実験では既存水槽でのスペックに応じ、従来の海洋構造物の水槽実験の手法に則ることで対応している。しかし、再生可能エネルギー関連装置は、従来の海洋構造物と違い、発電量が重要な評価基準である。発電量推定における水槽実験には、設置海域環境の再現・モデル化と、発電装置の模型化・モデル化の双方が重要である。環境の再現という観点では、実機で喫水も水面上も100mを超えるような浮体式洋上風車に対応する波・風の再現、海流・潮流発電であれば縮尺を想定するとわずか数cm/sでの空間的な流速分布の再現などが水槽の性能として要求され、発電装置のモデル化という観点であれば、例えば波浪発電では性能に直結する波浪中での多自由度の運動の模型化などが課題である。即ち、水槽実験での環境の再現性能と、水槽実験結果が発電性能評価につながるモデル化の双方とも新しい課題であり、それらの向上に基づく合理的な外挿が必要とされている。さらに、今後の海洋再生可能エネルギーの進展には、単機の性能だけでなく、複数機によるアレイ配置やファーム化が不可欠であり、そこを見据えた水槽実験のあり方についても検討する必要がある。

 これらの背景を踏まえ、本委員会では海洋再生可能エネルギーの性能評価に関する水槽実験として、【可能なこと】、【不可能なこと】と【実施すべきこと】、【実施しなくてもよいこと】について整理を行い、現実的で合理的な実験要件や実験手順も含めた実験手法の検討を行う。

 日本周辺に代表される大水深域での海洋再生可能エネルギー発電(ファームだけでなく単機としても)の商用化に向けて世界的にも現状技術は発展途上であり、学会を通して合理的な海洋再生可能エネルギーに関する水槽実験の考え方を明示し発信することは、日本の海洋技術の効率的な発展のためにも重要な意義がある。

3.国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ

 特に浮体を用いた海洋再生可能エネルギー開発については世界中で始まったばかりであり、商用化の例は極小規模なものに限られている。①でも述べたように、ITTCなどで海洋再生可能エネルギーに関する水槽実験のガイドラインの提案がなされているが、現段階では世界各国での発電コンセプトからスケールまで千差万別であることから、総論的な記述に留まっている部分が多い。また、IEC基準においては発電量評価が強く求められているが、商用化という観点では、発電性能評価につながる水槽実験のあり方については国際的には全く定まっていない。

 本研究委員会の活動を通して、水槽実験結果から発電量をどこまで合理的に評価できるか、を示すことが海洋再生可能エネルギー関連機器に関する水槽実験の信頼性と重要性と可能性を広げることになる。

 本研究委員会の活動を通して、実際に水槽実験を実施する視点も踏まえた模型化、スケール問題、発電性能評価につながる合理的な水槽実験手法を検討しその考え方を示すことは、今後の日本における合理的な海洋開発技術の向上に資する。また、研究委員会に参画する委員を通してITTCのガイドラインやIEC基準作成にプロセスに成果の一部をフィードバックすることで、国際的にも貢献する。

基本情報

委員会長(所属)
村井 基彦(横浜国立大学大学院環境情報研究院・准教授)
委員会委員数
14名
キーワード
海洋再生可能エネルギー、水槽実験、浮体構造物
活動期間
H27.8~H28.6

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