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公益社団法人 日本船舶海洋工学会が授賞するシップ・オブ・ザ・イヤーは、毎年日本で建造された話題の船舶の中から、技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考して与えられるもので、29回目となる今年は合計9隻が選考の対象となりました。
シップ・オブ・ザ・イヤー2018の応募作品発表会と選考委員会は、去る5月13日に明治記念館で開催され、「シップ・オブ・ザ・イヤー2018」には、従来のPCCにはない斬新な外観デザインと種々の新機軸を採用した次世代型自動車専用船「BELUGA ACE」が選ばれました。またガスと重油の二元燃料主機関を搭載し、高度なガスハンドリングを実現した最大級のLNG運搬船「CASTILLO DE MERIDA」が技術特別賞を受賞しました。
各部門賞には、「さんふらわあ さつま/きりしま」(大型客船部門)、「うみのこ」(小型客船部門)、「COOL EXPRESS」(大型貨物船部門)、「げんかい」(漁船・作業船部門)、「NMRI航行型AUV4号機」(海洋構造物・機器部門)がそれぞれ選ばれました。
授賞式は、日本マリンエンジニアリング学会および日本航海学会の表彰と共に、海事三学会合同表彰式として7月12日に海運クラブにおいて執り行われます。
「シップ・オブ・ザ・イヤー2018」には、大型客船部門1隻、小型客船部門1隻、大型貨物船部門3隻、漁船・作業船部門3隻、海洋構造物・機器部門1隻の、計9隻の応募があった。これを受けて4月4日に学会所属の技術専門家からなる予備審査委員会が開かれ、9隻すべてが本選考委員会に推薦された。
候補船の発表会・選考会は、5月13日に明治記念館(東京都港区)で開催され、一般参加者も多数聴講する中、各応募船をアピールする熱心なプレゼンテーションが行われ、その後別室にて選考委員会が開催された。全13名の委員のうち12名が選考委員会に出席した。なお会場に参加した一般会員による投票の最多得票船は、これを1票として加算した。
事前の予備審査委員会での審査結果(技術の独創性・革新性、技術・作品の完成度、社会への波及効果、話題性・アピール度)やコメントを参考とし、発表会でのプレゼン内容や質疑をもとに選考が進められた。まず全委員から各自が推薦する作品1~3点を挙げてもらい、候補に挙げられた中から、推薦数上位の2隻について投票を行ってシップ・オブ・ザ・イヤーを選定することとした。
投票の結果、6層リフタブルデッキを備え、横隔壁を完全になくすなど、種々の新機軸を採用し、かつ従来のPCCにはない斬新な外観デザインの自動車専用船「BELUGA ACE」が、過半数の7票を獲得し見事シップ・オブ・ザ・イヤー2018の栄冠を手にした。また惜しくも次点となったが、予備審査委員会で特に技術的に優れているとの評価を受けたLNG運搬船「CASTILLO DE MERIDA」には、シップオブザイヤー技術特別賞を贈ることとなった。
続いて、各部門賞の選考を実施し、大型客船部門賞に「さんふらわあ さつま/きりしま」、小型客船部門賞に「うみのこ」、大型貨物船部門賞に「COOL EXPRESS」、漁船・作業船部門賞に「げんかい」、海洋構造物・機器部門賞に「NMRI航行型AUV4号機」が、それぞれ審査委員の過半数の票を得て選考された。
選考委員長 池田 良穂
リフタブルデッキを2層から6層に増やし、船殻構造をバルクヘッドなしとすることで荷役効率が向上し、船首尾形状の見直しや低摩擦AF 塗料等の省エネ技術の採用により、車1台当たりのCO2排出量を大幅に減少させた自動車専用船。AR技術を用いた航行支援システム、遠隔現場支援システムなどに加え、外観デザインも一新された次世代型PCCである。
拡張パナマ運河を通航可能で最大級のメンブレン方式LNG運搬船。天然ガスと油を燃料として使用できる2ストローク二元燃料主機関を搭載し、船型最適化によって省燃費を実現した。自然気化ガスの再液化装置や燃料化設備を搭載して運航の柔軟性を高めるとともに環境負荷低減を図っている。基幹システムの冗長性確保、各種の解析、高圧ガスハンドリングなどにより、安全性向上が図られている。
大阪/志布志航路に就航した新造船で、非日常の船旅を楽しめるよう「くつろぎのプライベート空間」やゆとりのあるパブリックスペースを充実させている。推進システムには、二重反転プロペラとハイブリッド推進システムを導入し、高い省エネ性能と操船性を両立させた。
滋賀県では「みずうみに学んで世界の明日をひらく人」という理念のもと全ての小学校5年生を対象に、学習船を使った教育を35年間展開。一泊二日の航海で琵琶湖の環境や寄港地の歴史・文化などを学ぶ。新船は、最新の教育施設を装備するため大型化した5層構造とし、琵琶湖の強風と浅喫水の課題を克服し、より安全で環境に優しい学習船となった。
世界最大容積の冷蔵・冷凍貨物艙を持ち、コンテナを含め多種多様な貨物が積載できる冷凍運搬船。最新省エネ主機、高速域に対応した船首尾船型などにより燃費の向上を図っている。振動、騒音を低減した良好な居住環境、排ガス規則に沿ったSOxスクラバーの採用などにより環境に配慮した船となっている。
「げんかい」は試験研究用の音響測深装置などの調査機器を備えた60GT型の高速艇。船首や船底形状に技巧を凝らし、多気筒主機関とLC型5翼固定ピッチプロペラにより気泡や船体振動をおさえて、高速域においても高精度なデータ取得が可能な機能性を実現した。調査船が排水量型から多機能な高速艇船型へシフトする先例となることが期待される。
本機は海上技術安全研究所の航行型AUVの主力機で、国の研究・開発プロジェクト「SIP次世代海洋資源調査技術」のもとで開発された。最大ピッチ角80°最大速力6.5ノット等の優れた機体性能に加え、調査効率を飛躍的に向上できる複数機AUV同時展開が可能な運用体制を備えている。広大なEEZの高効率で高精度な海洋調査を実現する先進的プラットフォームである。