18907
公益社団法人 日本船舶海洋工学会が授賞するシップ・オブ・ザ・イヤーは、毎年日本で建造された話題の船舶の中から、技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考して与えられるもので、30回目となる今年は合計12隻が選考の対象となりました。
シップ・オブ・ザ・イヤー2019の応募作品発表会と選考委員会は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて開催が遅れていましたが、去る7月27日にWeb会議を併用して開催され、「シップ・オブ・ザ・イヤー2019」には、完全バッテリー駆動でゼロエミッションを実現し自動操船システムも装備した旅客船兼自動車渡船「E/V e-Oshima」が選ばれました。
各部門賞には、「きたかみ」(大型客船部門)、「シーパセオ」(小型客船部門)、「うたしま」(小型貨物船部門)、「やしお」(漁船・調査船部門)、「いしん」(作業船・特殊船部門)がそれぞれ選ばれました。
授賞式は、日本マリンエンジニアリング学会および日本航海学会の表彰と共に、海事三学会合同表彰式として9月25日に海運クラブにおいて執り行われます。
「シップ・オブ・ザ・イヤー2019」には、大型客船部門1隻、小型客船部門5隻、小型貨物船部門4隻、漁船・調査船部門1隻、作業船・特殊船部門1隻の、計12隻の応募があった。これを受けて4月3日に学会所属の技術専門家からなる予備審査委員会が開かれ、このうち10隻が本選考委員会に推薦された。
候補船の発表会・選考委員会は、当初5月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて延期され、7月27日にWeb会議併用方式で開催された。
各応募船の担当者によるオンラインでのプレゼンテーションが行われ、選考委員による熱心な質疑が行われた。質疑応答は予定されていた時間内には終わらず、途中の休憩時間および選考委員会の予定時間も割いて行われた。
その後、選考委員会が、全13名の委員のうち11名が出席して開催された。発表会でのプレゼン内容や質疑応答、予備審査委員会での審査結果(技術の独創性・革新性、技術・作品の完成度、社会への波及効果、話題性・アピール度)やコメントを参考として選考が進められた。まずフリーディスカッションの後、全選考委員から各自が推薦する作品1~3点を推薦理由も説明の上、挙げてもらった。その後、推薦数の多かった2隻の船について活発な議論が行われ、最終的には候補船の中から無記名で投票を行ってシップ・オブ・ザ・イヤーを選定した。
投票の結果、全リチウムイオンバッテリー駆動でゼロエミッションを実現し、自動操船システム、自動着桟システムなど先進技術も取り入れた旅客船兼自動車渡船「E/V e-Oshima」が、1回目の投票で過半数の6票を獲得し見事シップ・オブ・ザ・イヤー2019の栄冠を手にした。
続いて、各部門賞の選考を実施し、大型客船部門賞に「きたかみ」、小型客船部門賞に「シーパセオ」、小型貨物船部門賞に「うたしま」、漁船・調査船部門賞に「やしお」、作業船・特殊船部門賞に「いしん」が、それぞれ審査委員の過半数の票を得て選考された。
選考委員長 池田 良穂
日本初の完全バッテリー駆動でゼロエミッションを実現し自動操船システムも装備したフェリー。短距離航路専用であるが航行に必要な電力は全て、600kWhの大容量リチウムイオンバッテリーから供給され、低騒音、低振動かつクリーンな航行が可能である。自動操船機能では、衝突及び座礁防止のための自動避航が可能。オールジャパンの技術が結集されている。
仙台苫小牧航路に就航した新造船。客室は大部屋を廃止して個室を大幅に増やすともに、個室以外はカプセルタイプの寝台とし、プライバシーの確保と機能性の向上を実現。先代「きたかみ」とほぼ同サイズでありながら、同一船速条件で10%以上の大幅な省エネルギーとCO2排出量削減を実現させた。
広島、呉、松山を2時間40分で結ぶ定期航路船。フェリーならではの魅力を見つめ直し「海上を移動する心地よい公園」をコンセプトに、船内回遊を積極的に促す仕掛けを随所に盛り込んだ。細部にまでこだわったデザイン で、瀬戸内海を眺めながら船内を歩き回るのが楽しみな船。
世界最大級の大容量リチウムイオン電池を搭載したハイブリッド貨物船。高速運航時には主機関を使用しLiイオン電池に充電。港内や瀬戸内海等の短距離低速運航では電気推進システムに切替え、Liイオン電池で推進電動機を動かす。大容量電池をサイドタンクの一部に収納するなど499T型の制約の中で工夫し、省エネ、低振動、低騒音、労務負荷低減、乗務員の居住環境改善を実現した。
海洋調査機器を備えた東京都の漁業調査指導船。水槽試験により最適なソナードームの位置や形状を決定。船首、船尾形状にも工夫を凝らし、省エネと同時に荒天時の海洋調査も可能とした。機関等の異常監視、船内システムの遠隔更新など、今後の漁業調査船の先駆となる「スマート船」。
国内初のIGFコードに準拠し環境負荷を低減したLNG燃料タグボート。LNG燃料タンクを脱着可能にすることで、燃料供給時および整備点検時の作業時問短縮を可能にした。タグボートに必要なパワーとスピードの両方を兼ね備えるためのデュアルフューエルエンジンを搭載し、故障予知や機器不具合の早期検知システムで、安全運航強化を実現している。