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海事プレス社のご厚意により、今年も受賞船を特集した海事プレス増刊号「シップ・オブ・ザ・イヤー2021」を、先着100名の方に進呈します。ご希望の方は1.郵便番号、2.住所、3.氏名、4.電話番号を記載し、学会事務局までemailでお申込みください。
バックナンバー(2012~2020、除2016)についても残部限りで受付けます。
公益社団法人 日本船舶海洋工学会が授賞するシップ・オブ・ザ・イヤーは、毎年日本で建造された話題の船舶の中から、技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考して与えられるもので、32回目となる今年は合計11隻が選考の対象となりました。
シップ・オブ・ザ・イヤー2021の応募作品発表会と選考委員会は、去る5月10日に、新型コロナウイルス感染症対策のためWeb会議併用形式で開催され、「シップ・オブ・ザ・イヤー2021」には、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が選ばれました。
各部門賞には、「ハイドロびんご」(小型客船部門)、「CENTURY HIGHWAY GREEN」(大型貨物船部門)、「りゅうと」(小型貨物船部門)、「汐路丸」(漁船・調査船部門)がそれぞれ選ばれました。
授賞式は、日本マリンエンジニアリング学会および日本航海学会の表彰と共に、海事三学会合同表彰式として7月22日に海運クラブにおいて執り行われます。
「シップ・オブ・ザ・イヤー2021」には、小型客船部門4隻、大型貨物船部門2隻、小型貨物船部門3隻、漁船・調査船部門2隻の、計11隻の応募があった。これを受けて3月31日に海事分野の技術専門家からなる予備審査委員会が開かれ、このうち10隻が本選考委員会に推薦された。
候補船の発表会・選考委員会は、5月10日に、発表会はオンライン形式で、選考委員会はWeb会議併用方式で開催された。
各応募船の担当者によりプレゼンテーションが行われ、選考委員からの活発な質疑が行われた。質疑応答は予定されていた時間を超えることも多く、全10隻の発表会は3時間余りに及んだ。
その後、選考委員会が11名の委員が出席またはWeb参加して開催された。発表会でのプレゼン内容や質疑応答、予備審査委員会での審査結果(技術の独創性・革新性、技術・作品の完成度、社会への波及効果、話題性・アピール度)やコメントを参考として選考が進められた。まずフリーディスカッションの後、全選考委員から、シップ・オブ・ザ・イヤーに推薦する作品1~2点を推薦理由も付け加えながら挙げてもらった。
候補に挙げられた3作品についてさらに活発な議論が行われ、最終的には10票を得た「すいそふろんてぃあ」をシップ・オブ・ザ・イヤー2021に選定した。同船は、燃焼時にCO2を排出しない次世代エネルギーとして期待される水素を、-253℃で液化し気体の1/800の体積にして運ぶ液化水素運搬船のプロトタイプとして世界に先駆けて開発・建造された。オーストラリアからのブルー水素の運搬に成功しており、今後の大型運搬船への発展が期待される。
続いて、各部門賞の選考を実施した。
小型客船部門賞においては、世界初の水素を燃料とするアルミ合金双胴旅客船「ハイドロびんご」が9票を得て選ばれた。シップ・オブ・ザ・イヤー2021に選ばれた水素運搬船と共に、水素を動力源とする船舶が同じ年に開発されたことは意義深い。また、従来船とは異なる外観デザインも評価された。
大型貨物船部門では、LNG燃料の自動車運搬船「CENTURY HIGHWAY GREEN」が8票を得て選ばれた。昨年のシップ・オブ・ザ・イヤー受賞船と同じLNG燃料の自動車運搬船であるが、高圧式燃料噴射システムを採用したディーゼルサイクルとして、環境負荷の大きいメタンスリップを軽減していることが評価された。また、外観デザインも優れているとの評価もあった。
小型貨物船部門賞には、196トンのケミカル運搬船「りゅうと」が7票を得て選ばれた。船員不足に悩む内航船業界にあって、荷役や離着岸操船のデジタル化を進めて船員の負担軽減を図ったことが評価された。
漁船・調査船部門賞には、東京海洋大学の練習船「汐路丸」が10票を得て選ばれた。船舶職員の養成だけでなく、海洋開発人材の養成も担う多機能船であり、新しい海洋系大学の練習船に相応しいとの評価があった。
選考委員長 池田 良穂
燃焼時に二酸化炭素を排出しない次世代エネルギーとして期待される水素を大量に海上輸送できる世界で初めての液化水素運搬船。陸上用液化水素設備で培った真空断熱技術を基に、海上輸送用タンクや配管システムなどを開発することで、長距離外洋航行が可能な液化水素運搬船を実現した。海外から安価な水素を安全かつ安定的に調達することが可能となり、発電をはじめとする水素利用の普及促進と水素価格の低減が期待される。
水素と軽油を燃料とする混焼エンジンで航行する世界初の旅客船「ハイドロびんご」は、航行時のCO2排出量を最大50%まで削減が可能。また、水素社会インフラが整備されていない環境下でも、軽油専焼で継続して航行ができる。独自発想による水素燃料システム、専用の水素タンクトレーラーも併せて開発した。さらに、交通バリアフリー法に適合する設備を備えており、様々な方々にご乗船して頂く事が可能な旅客船として成立している。
川崎汽船は、国際海事機関が定める2030年目標である「CO2排出効率2008年比40%改善」を上回る「同50%改善」という目標を設定した。そのアクションプランとして国内造船所建造のLNG燃料船としては初めて高圧式LNG焚き主機関を搭載した本船を実現させた。
また、本船は時代に先駆けて船内通信インフラを構築したデジタルフラッグシップとして、世界初の遠隔検査適応新造船となっている。
本船に導入した最新デジタル技術である『集中荷役遠隔システム』・『離着桟支援システム』・『遠隔監視システム』は、乗組員の作業を軽減することを目的としており、特に労務負荷の大きいタンカー荷役作業の集中遠隔操作や高度な技術が求められる離着桟作業、機関室の監視を支援する設備を内航船では初めて搭載した船舶であり、本システムにより省力化を実現し、深刻な人手不足の解消に繋がることを最大の効果として期待している。
東京海洋大学の練習船「汐路丸」は、動くキャンパス・動く研究室として、船舶職員養成、船舶運航及び海洋環境の教育・研究機能を実現し、さらに海洋開発分野の教育・研究機能と災害支援機能も付加した船として建造された。大学の教育・研究に役立つ船として、今後、日本国内の船舶に関する教育・研究の裾野を広げることが期待されている。